ロッククライミングの代謝経路
ロッククライミングにおいては、筋力、パワー、持久力を組み合わせて用いる必要があります。
したがって、バランスの取れたクライマーとなるには、代謝トレーニングやおよびコンディショニングを通じてアデノシン三リン酸(ATP)の三大産生経路を強化し、それによって筋のフィットネスを十分に最適化しなければなりません。
標準的な課題やルートにおいては、間欠的な高強度クライミング(高難度で生理学的要求の高いムーブ)の合間に低強度の局面があり、クライマーはそこで有酸素的に回復し、チョークを手につけ、次のムーブを計画します。
ただし、クライミング中の休息時間の長さは個々のルートの状況によって異なり、例えば、簡単なホールド(壁にとりついた状態を保つのに高強度の等尺性筋活動を必要としない)の上では30秒以上休息するかもしれませんが、すべてのホールドが高強度の等尺性筋活動を要するような高難度のルートで休息する場合は、登攀することに最大限の代謝エネルギーを費やすために、チョークをつけるのに使う時間を最小限に抑えがちになります(例えば、壁が急勾配で前傾していて、両足と身体重心の間の水平距離が大きく開いている場合など)。
同様に、トラッドのルートでは、10フィート(約3m)ごとにギアを設置して、登るのに20分以上かかる場合があるため、優れた有酸素性持久力が要求されます。
ボルダリングの代謝経路(ホスファゲン、解糖系)
ボルダリングはほとんどの場合、ホスファゲン系と解糖系に大きく依存しています。
これは、短時間で高強度というボルダリングの特性によるもので、クライミングの強度と時間が増大すると、血中乳酸濃度は上昇することが知られており、これはクライミング中に解糖系の割合が大きくなっていることを示しています。
血中乳酸濃度は、握力の持久力低下と相関していることが明らかになっており、クライミング中の疲労の指標となる可能性があります(ただし、乳酸濃度自体は疲労の原因ではないことに注意)。
非常に高強度なクライミング中の血中乳酸濃度は3~10mmol/Lに達すると報告されていますが、個人内では、この濃度は自転車運動やランニング中の測定値に比べて有意に低くなります。
これはおそらく、クライミングにおいては最大に近い代謝要求で比較的少ない筋量を用いるためとされています。
競技クライマーの場合、ボルダリング球技会では課題のアテンプト(トライ)間にとれる回復時間が非常に短く、その間に有酸素的代謝による回復が十分ではない可能性があるため、無酸素性能力の重要性を認識する必要があります。
引用・索引West,D Burd N Churchward Venne T Camera DMitchell C Baker S Hawley J Coffy V and Phillips S Sex based Comprarisons of myofibrillar protein synthesis after resistance exercise in the fed state Journal of Applied Physilogy112:1805-1813.2012

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