骨格筋電気刺激による代謝
骨格筋電気刺激による代謝研究では、正常血糖高インスリンクランプ法と呼気ガス分析の同時解析を行い、骨格筋の糖・エネルギー代謝促進効果を検討しました。
その結果、電気刺激中に酸素消費量は安静時の約2倍に上昇し、体内のエネルギー消費(20分刺激で約50kcal)が亢進することを実験的に明らかにしました。
内因性糖放出が抑制された生理的条件下において、全身糖取り込み率は電気刺激によって有意に上昇するとともに、その亢進が刺激終了後約90分以上持続することも見出しました。
この新知見は、糖尿病の予防・施術に不可欠な血糖コントロールに対する骨格筋電気刺激の有効性を強く示唆しています。
さらに、この骨格筋電気刺激法による糖・エネルギー代謝特性に及ぼす効果を同一酸素摂取量での自転車運動と比較検討した結果、電気刺激では血中乳酸濃度・呼吸商の有意な上昇により、筋グリコーゲン消費亢進が認められました。
しかし、この効果は同等の運動強度での自転車運動では認められませんでした。
運動単位の動員様式
通常の随意運動時における運動単位の動員様式は、収縮張力が低く、疲労しにくい筋線維を支配している遅筋線維から順次動員されます。
対照的に電気刺激では、太い神経線維で支配される速筋線維から動員されます。
人の大腿四頭筋に電気刺激を誘発させた場合、刺激後の筋内のグリコーゲン枯渇は速筋線維で著しく高いことや解糖系によるエネルギー利用率が遅筋線維の2倍も高いことが報告されており、電気刺激による選択的な速筋線維の動員によって随意収縮とは異なるエネルギー代謝特性の存在が示唆されています。
このように高強度の運動を要求することなく、電気刺激ではグリコーゲンを含めた糖質エネルギーの利用が高いものと考えられることから、糖尿病の体質改善効果にも期待できます。
引用・索引Irrcher I , Ljubicic V,Hood DA :Interactions Between ROS and AMP kinase activity in the regulation of PGc-1a Transcription in skeletal muscle cells .Am J Physiol Cell Rhysiol296:C116-C123.2009

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