急性、慢性の末梢神経損傷
RT(レジスタンストレーニング)により、慢性・急性両方のメカニズムの結果、末梢神経損傷が起こる可能性があります。
その原因としては様々な因子が推測されていますが、不適切なテクニック、オーバートレーニング、直接的外傷、可動域末端での伸展損傷、筋肥大などが含まれます。
末梢神経損傷の発生頻度は、RTによる傷害の8%以下であり稀ではありますが、ある種の神経は、その存在部位の結果、伸展性または圧迫性の神経障害になりやすくなります。
各神経における神経障害
肩甲上神経
肩甲上神経障害は、一般的人の集団よりも、ウェイトリフティングの選手集団において多くの症例が報告されています。
報告によると、肩甲上神経はミリタリープレスなどのエクササイズ中に圧迫され、影響を受けることが示唆されています。
筋皮神経
筋皮神経障害は、RT集団の間では、烏口腕筋と上腕筋の肥大が原因であると報告しています。
Braddom&Wolfは高強度のRTに起因する筋皮神経障害の症例を3件報告し、筋内の圧迫が負傷のメカニズムであることを示唆しました。
長胸神経
長胸神経と内側胸筋神経の障害は、RT集団において報告されており、それぞれ神経牽引と筋内の筋肥大の結果生じると仮定されています。
ミリタリープレスやラットプルダウンなどの特定のエクササイズは、長胸神経の障害の原因として関連性が指摘されています。
ウェイトを頭上に挙上することにより、神経が上部に引き伸ばされ、その伸張により誘発される末梢神経障害を起こします。
内側胸筋神経
内側胸筋神経の障害はRT集団において、主として大胸筋の筋肥大により、筋内のエントラップメント(絞扼)が生じた結果であると報告されています。
腕神経叢
最後に、腕神経叢の下神経幹が、前斜角筋、僧帽筋上部、小胸筋などの筋緊張や筋肥大により圧迫される可能性があります。
特にRT参加者は、その典型的な身体特性とエクササイズの結果として神経障害性の病変をもたらす可能性があり、このような筋肥大と筋緊張に注意を向ける必要があると思われます。
引用・索引Department of Physical Therpy Nova Southeastern University Fort Lauderdale Florida

- 作者:聖路加国際病院整形外科
- 発売日: 2015/06/01
- メディア: 単行本