睡眠と至適パフォーマンス
睡眠は、至適パフォーマンスに貢献する重要な因子であることが判明しています。
しかしエリートアスリートは、心理的・社会的・生理的ストレスによって、適切な睡眠が得られないこともあります。
アスリートの睡眠衛生を改善することは、競技パフォーマンスにとって重大な意味をもちます。
エリートアスリートが至適競技パフォーマンスを発揮するには、「トレーニング反応」の基本原則を中心とする体系的アプローチに従ってトレーニングを行わなければなりません。
そして、それは「ストレス/疲労状態」と呼ばれるストレス、疲労、そして回復のバランスに焦点を当てていくことといえます。
ストレス/疲労状態を回復する睡眠
Kentta&Hassmenらのよるとストレス/疲労状態とは心理的・社会的・生理的な統合現象であり、心理的、社会的、そして生理的要素がこの状態に非常に大きな影響を与えます。
そのためアスリートには、回復を促進することで、ストレス/疲労状態が緩和できる方策が必要になります。
そして、その方法のひとつは睡眠になります。
しかし、睡眠は、回復と競技パフォーマンスの至適化にとって重要であるにもかかわらず、その重要性は見過ごされ、回復方策として適切に扱われていません。
Fallonが、アスリートに疲労や倦怠の主な原因を問うと、最大の問題として睡眠(の質と量)が挙がるだけではなく、一時的疲労の重要な要因としてもやはり睡眠(質と量)が1位に挙がると報告しています。
睡眠は、トレーニング後の回復に必要不可欠な要素であると認められており、また唯一にして最大の有効な回復方策であるという事例報告もあります。
しかし実際に競技系アスリートの睡眠の質を評価すると、相当数のアスリートが質の低い睡眠をとっており、Venterらの調査も同様の結果を示しており、南アフリカのエリートアスリートの41%が入眠時に、60%が起床時に問題を経験しており、これは睡眠不足を示唆している可能性があります。
同様のデータはErlacherらによっても示されており、ドイツのエリートアスリートの79%が重要な試合や前に入眠の困難を、32%が頻繁な中途覚醒を報告しています。
これらのデータは、アスリートがより多くの睡眠をとる必要性を示していると考えられ、一般的な推奨基準によると、トレーニング後に適切な生理的および心理的回復を得るには7~9時間の睡眠が必要であり、そのうちの80~90%が夜間にとる必要があります。
また、負傷中、遠征中、あるいはアスリートのトレーニングにあたっては、睡眠の質の低下、すなわち睡眠不足を示す兆候や症状に得に注意を払わなければならず、なぜなら睡眠不足は、トレーニングの適切な回復を妨げる可能性があるからです。
引用・索引Bird SP Implementation of recovery strategies 100-point weekly recovery checklist Int J Athletic Ther Train 16:16-19.2011

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