ACL損傷のリスク因子
下肢間の筋力の対称性
ACL損傷のもう一つの主要なリスク因子は、下肢間の筋力の非対称性になります。
研究により、ハムストリングスの短縮性/伸張性筋力が左右で15%以上差があると、これらの筋の傷害のリスクが増大することが明らかになっています。
同様に、サッカー選手において、少なくとも片方の下肢の短縮性のハムストリングス/大腿四頭筋の筋力比が0.47~0.45以下の場合、また伸張性のハムストリングス/大腿四頭筋の左右混合筋力比(等速性装置で計測)が0.80~0.89より低い場合は、ハムストリングス傷害リスクが高まります。
しかし、重要なこととして、筋力のアンバランスに加え、絶対筋力と相対筋力の両方を考慮すべきです。
アスリートの筋力自体が不十分であれば、ハムストリングス/大腿四頭筋比率がたとえ適切であったとしても意味がありません。
反対に、拮抗する筋群の筋力を発達させずに絶対的筋力だけを高めても、さらに筋力のアンバランスが増大して、潜在的なリスク因子が増えることになります。
さらに、このような弱点に加えて、伸張性筋力の減少が傷害を傷害を起こす可能性があることにも注意が必要になります。
この主張は、アスリートの大腿四頭筋の伸張性筋力の不足を腱の傷害と関連づけた研究によって裏付けられています。
ハムストリングスの筋力
ハムストリングスの筋力が弱いためにこのような筋力比が達成できないと、最大スプリント中の膝の伸展に耐えて股関節の伸展を始めるために必要な筋力が、筋腱単位の運動耐性を上回ってしまうことも起こりえます。
等速性筋力と垂直跳びのデータを用いて測定したところ、両脚の危険な筋力差の閾値は10~15%であると報告されています。
膝周囲の筋の筋力不足はきわめて危険ですが、殿筋の筋力不足とスポーツ傷害との関係にも注意することも重要になります。
股関節の外転、外旋および股関節の伸展と組み合わせた膝周囲の筋の筋力不足は、膝蓋大腿疼痛症候群、ACL損傷、および腸脛靭帯症候群のリスク因子になります。
さらに、伸張性股関節内転/外転の筋力比が90%以上であることは、サッカー選手の鼠径部傷害の施術と予防に重要な役割を果たすことが示唆されています。
さらに、パワー不足も同様に傷害発生率の増加に関与します。
低レベルのパワー発揮は、電気力学的遅延の増加の原因となる可能性があり、これはスポーツ活動における筋の反応速度の低下をもたらします。
引用・索引School of Health and Sports Sciences Universitat de Girona Salt Catalonia Spain46-47

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