運動と炎症
運動は、多くの経路を経て慢性的な炎症を軽減する働きがあります。
習慣的に運動を行なう人は、軽度の炎症レベルが低い傾向があり、CRP値や他の炎症誘発物質の値が低いという特徴があります。
運動を通して炎症が軽減するひとつの理由は、まず単に、蓄えた脂肪が減ることにあります。
身体活動とエクササイズはエネルギー消費を増やし、摂取食物とその利用との良好なバランスを促進します。
さらに、内臓脂肪の貯蔵は、皮下脂肪よりも一層運動の影響を受けやすい傾向があるとされます。
内蔵脂肪は、他の脂肪貯蔵よりも一層炎症を起こしやすいため、特に重要になります。
過度の肥満と炎症が関連していることを前提とすると、過体重の人たちが肥満の程度をわずかでも改善できれば、炎症レベルを低下させる可能性が高いことは明らかです。
さらに、定期的な運動が減量とは別のメカニズムを通して、炎症を減らす効果があることが知られています。
有酸素性トレーニング
習慣的な有酸素性トレーニングは、単球の表現型を変え、TNF-αなどの炎症誘発性サイトカインの産生と分泌を減らすことが知られています。
長期にわたる持久系エクササイズの後、単球が細胞表面の炎症刺激物質の受容体の表現を抑えることも証明されています。
定期的な運動は、内因性抗酸化防衛能を拡大することによって、炎症状態を軽減する可能性が高くなります。
酸化ストレスと炎症との間には関係があり、運動やトレーニングは、収縮する筋から出る活性酸素種と反応的窒素種の放出の減少をもたらします。
また、酸化ストレスは、炎症免疫反応の引き金となりますが、鍛錬された骨格筋は抗酸化能が強化されるため、慢性的な炎症の低下をもたらします。
骨格筋の炎症状態への介入
また骨格筋は炎症状態への介入に直接関与します。
筋収縮はいくつかのマイオカインを大きく増加させ、その中には脂肪細胞によって放出される炎症誘発性サイトカインであるIL-6も含まれ、筋が産生するIL-6は運動中に100倍以上増加します。
しかし、逆説には、このIL-6は抗炎症性で、IL-10のような抗炎症性のサイトカインの濃度の増加とTNF-αの低下に関与します。
以上をまとめると、習慣的な運動は多くの重要な抗炎症刺激を誘発します。
慢性的に不活発な骨格筋のマイオカイン特性は、抗炎症作用が不十分であり、結果的に炎症反応を促進するとの主張が成り立ちます。
さらに、不活発なライフスタイルは、慢性的なエネルギーの超過を促進し、炎症誘発効果をもたらす体脂肪の増加を招きます。
引用・索引Ross R and Jannsen I. Physical activity, total and regional obesity: Dose-response considerations. Med SciSports Exerc 33: S521–S527, 2001.