女性アスリートの下肢スティフネス
女性にみられる下肢スティフネスの動員は、特に前十字靭帯(ACL)への傷害の発生リスクを高める可能性があります。
高強度のプライオメトリックトレーニングを実施する前に、下肢(特にハムストリングス)の筋力と腱のスティフネスを高める必要があります。
下肢スティフネス
スティフネスとは一定の力を受けた際に、下肢筋群全体の伸張に対する抵抗力のことになります。
例えば、2人のアスリートが、ドロップジャンプなどの伸張-短縮サイクル(SSC)を伴う課題を行なうとします。
ジャンプの伸張性局面において筋群に加わる力が両者とも同じであった場合、同局面における足関節、膝関節、股関節の屈曲が小さいアスリートのほうが、伸張に対する抵抗力が大きく、下肢スティフネスがより高いということになります。
プライオメトリックトレーニングにおいてSSCをうまく利用するためには、ある程度の下肢スティフネスが必要であることが明らかになっています。
しかし、過度の下肢スティフネスは持続的な骨の傷害発生リスクを高め、反対に下肢スティフネスの不足は軟部組織損傷の損傷リスクを高めます。
前十字靭帯(ACL)の傷害や腱に関連する傷害が女性に多い理由として、プライオメトリックトレーニングにおいて、下肢スティフネスの不足に加え、潜在的に有害な下肢スティフネスの動員(主に筋活動によって調整される)が観察されています。
性差
両足ホップを行なう際の下肢スティフネスには、男女間で有意差があるという研究結果が出ています。
SSC課題における下肢スティフネスの動員の性差は、筋の動員パターンと筋腱複合体(MTU)の力学的特性の違いが主な原因となって生じている可能性が考えられています。
筋の動員に関しては、2.3Hzおよび3.0Hzの両足ホップにおいて、女性は男性よりも大腿四頭筋の活動が46%、ヒラメ筋の活動が37%大きく、大腿四頭筋とハムストリングスの(Q:H)同時活動比も高値を示しました(女性:2.01、男性:1.54)。
最近の研究では、疲労度の高いクローズドキネティックチェーンエクササイズ(最大下のスクワット)を実施後の両足ホップにおける下肢スティフネス動員の性差を調べたところ、やはり女性は同様の筋活動パターンを示したと報告されています。
この場合も、女性は男性に比べ接地直前および直後の50ミリ秒間におけるQ:Hの同時活動比が高く、大腿四頭筋の活動が45%大きくなりました。
さらに、女性は、接地後の50ミリ秒間における大腿四頭筋の活動の最大振幅値を約4倍上回り、同一時間内に男性が示した値の2倍を記録しました。
大腿四頭筋の大きな力は、脛骨の前方移動を増大させ、ひいてはACL損傷リスクを増大させますが、このような増大は大腿四頭筋の大きな力に、ハムストリングスが抵抗できないときに生じます。
したがって、標準化した下肢スティフネスに性差が認められない場合でも、女性が用いている大腿四頭筋優位の下肢スティフネス動員はACL損傷のリスクを高める恐れがあります。
引用・索引Padua DA, Arnold BL, Perrin DH, Gansneder BM, Carcia CR, and Granata KP. Fatigue, vertical leg stiffness, and stiffness control strategies in males and females. J Athl Train 41: 294–304, 2006.
Women's Wellness: Perimenopause - What the Heck is Happening to My Body?

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