認知機能と神経
認知機能と神経変性疾患
神経変性疾患は年齢とともに発症率が高くなり、ヘルスケアシステムに大きな問題を呈しています。
身体不活動は多くの疾患の第一危険因子であり、身体活動は多くの研究者の興味のあるトピックになっています。
運動は認知機能、神経形成、新脈管形成、可塑性に関与するいくつかの神経栄養素の合成と放出を増加させます。
インスリン様成長因子(IGF-1)は、認知機能改善に関与するもう一つの神経栄養因子であり、運動でIGF-1レベルが増加しますが、認知機能が低下した高齢者ではIGF-1は定値を示します。
筋力トレーニングはテストステロンとIGF-1レベルを増加させるので、研究者によっては、筋力トレーニングのほうが心臓循環系トレーニングより有効であると議論する人もいます。
筋力トレーニングと認知機能の改善
Cassilhasらは、高齢者群の6ヶ月間の筋力トレーニング後に認知機能の改善と高いIGF-1レベルを観察しています。
また、Nottebornらはテストステロンの高い脳由来神経栄養因子(BDNF)レベルのカギになっていると仮説しています。
他の重要な知見は、アルツハイマー型認知症に関与するアミロイドレベルがIGF-1によって調節されており、IGF-1はβアミロイドペプチドと逆相関を示すことになります。
つまり、筋力トレーニングでIGF-1が増えれば増えるほど、アミロイドが減少する可能性があり、アルツハイマー型認知症の予防・改善につながる可能性があります。
引用・索引Irrcher I Ljubicic V Hood DA Interactionsbetween ROS and AMP kinase activity in the regulation of PGc Transcription in skeletal muscle cells Am J Physiol Cell Physiol296:C116-C123.2009

認知科学で探る 心の成長と発達 (別冊日経サイエンス232)
- 作者:日経サイエンス編集部
- 発売日: 2019/04/17
- メディア: 大型本