対症療法
疼痛への対応は、他の整形外科的疾患と同様に炎症症状の確認から始まります。
明らかな炎症症状があれば冷却を主体として炎症鎮静の施術を行いますが、腰痛では明らかな腫脹や熱感を伴う炎症症状は少なく、ほとんどの場合腰部や臀部の筋緊張緩和と血行促進のための温熱療法が適応となります。
過緊張状態の腰背部の筋が疼痛を発することが多いことから、筋緊張の寛解が重要な対症療法となります。
一般には温熱療法に加え、電気的に筋収縮と弛緩を繰り返す低周波療法が効果的です。
また、緊張が広範囲に及ぶ場合には、体幹筋全体のリラクゼーションを促す意味で腰椎牽引も適応となります。
また、骨盤周囲筋の緊張緩和のための股関節ストレッチ、胸郭周囲の筋のリラクゼーションのため呼吸運動促進も腰背部の筋緊張緩和に効果を示します。
一方、仙腸関節や椎間関節といった関節の疼痛に対しては超音波やレーザー、高周波などの物理療法を組み合わせますが、多くの場合、患部への力学的ストレスを排除・軽減するのが最も効果的な施術といえます。
したがって、患部へのストレスを軽減するような身体機能と運動習慣を学習させることが対処的にも重要となります。
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筋力
腰痛施術を前提とした場合、発生機序を無視して腹筋や背筋をはじめとする特定の筋を強化しても、期待どおりの施術効果を得ることは難しいです。
施術効果を得るには発生機序を十分に考慮し、また、筋力バランスにも十分配慮しつつ、誤った運動パターンを望しい運動パターンに変えるために必要な筋活動パターンを学習させ、強化することが大切になります。
なお、積極的な筋力強化を実施するには、十分な対症療法により疼痛を軽減させておくことが前提になります。
姿勢調査
腰痛施術において正しい立位姿勢の習得は極めて重要になります。
特に骨盤傾斜のコントロールを学習することは、腰椎前弯の程度を修正するための股関節及び下部体幹筋活動パターンの再学習にほかならず、スポーツ動作の中の腰椎骨盤リズム改善の前提条件でもあります。
骨盤傾斜のコントロールは背臥位、端座位、立位と段階的に進め最終的にはランニングやステップ動作などの運動中の姿勢矯正へとつなげていきます。
疼痛発生動作の再学習
屈曲型・伸展型・回旋型のいずれかの症例を呈する腰痛は、日常生活やスポーツ活動においてそれぞれの動作を行うたびに疼痛が増強し、それが望ましくない代償運動や筋スパズムの増悪を招く悪循環を形成します。
したがって、これらの疼痛発生動作の改善方法を選手に理解させ、正しい動作の学習と日常化を促すことが重要です。
疼痛発生動作の再学習(伸展型)
伸展型では体幹・股関節を進展させる動作において、股関節の伸展運動を十分に動員させ、下肢筋群を緊張を保ち、腰椎前弯の増強を防ぐことが大切になります。
その前提条件として、股関節屈筋群の伸張とリラクゼーション、臀筋群の機能改善、下部腹筋群の機能改善を図ることが重要となります。
また、椅子からの立ち上がりやバスケットボールなどで構えの姿勢からのジャンプ動作などで増強する疼痛に対しては、腰椎前弯の増強を制動し股関節伸展を主体とする立ち上がり動作を学習する必要があります。
疼痛発生動作の再学習(屈曲型)
屈曲型は、臀筋やハムストリングスの過緊張が体幹の屈曲動作に伴う骨盤の前傾を阻害する為に起こる腰痛です。
したがって、骨盤の前傾を促すため腹筋群と腸腰筋を同時に活動させる必要があります。
これには股関節伸筋群の緊張緩和と股関節屈曲運動における腸腰筋の機能改善が必要となります。
疼痛発生動作の再学習(回旋型)
回旋型は、回旋側または非回旋側に伸展型に類似した腰椎骨盤リズムが生じて起こる場合が多く、胸椎や股関節での回旋運動域の改善と、両側下部腹筋の緊張による骨盤前傾の制御が重要となります。
特に股関節の可動域を改善させる為にも股関節周囲筋の緊張緩和が必要になります。
一方、安静型の中にも腸腰筋の持続緊張に起因する伸展型に近いタイプと、臀筋群の過緊張がもたらす屈曲型に近いタイプも含まれます。
運動時痛が無いことから安静型と片付けずに、カウンセリングも含め注意深く症状の出現パターンを確認することが大切になります。
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Strength & Conditioning Journals Volumes32 Numbers3 pages33-46
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