膝関節の前方の安定性を担う前十字靭帯(ACL)の損傷は、前方不安定性がみられ、半月板損傷や内側側副靭帯(MCL)損傷の合併も多いです。
ACL損傷
ACL損傷は、バスケットボール、サッカー、スキーなどのスポーツ中に発生することが多く、ジャンプから着地、方向転換、急停止時に発生しやすいです。
コンタクトスポーツによる接触損傷や交通事故などでもACL損傷は発生します。
受傷時は、プツっという断裂音、膝の疼痛で競技を続行できないことがほとんどで、その後、膝の腫脹、可動域制限(完全伸展不能)が出現します。
関節穿刺で、関節血症がみられます。
半月板損傷やMCL損傷のほか、脛骨外側顆の裂離骨折や脛骨顆間隆起の骨折をともなうこともあります。
長期経過後、膝くずれや不安定感を繰り返しやすいです。
後十字靭帯(PCL)損傷
膝関節屈曲位で膝の前面を強打した際や交通事故(ダッシュボード損傷)、スポーツ中の接触事故などに発生します。
ACL損傷の比べて、自覚症状や機能障害は軽度、関節血症の程度も様々ですが、膝の不安定感を繰り返しやすいです。
落ち込み徴候(サグサイン)といって、膝を屈曲すると脛骨が後方に落ち込んでいる所見をみることがあります。

前十字靱帯(ACL)損傷診療ガイドライン2019(改訂第3版)
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中島恵
引用元:病気がみえる運動器・整形外科P187、188、189