ストレッチが必要なスポーツ障害
スポーツ障害では特に柔軟性の低下が深く関与し、ストレッチングが重要と考えられている障害が多くあります。
大腿四頭筋の柔軟性の低下
膝蓋大腿関節障害や膝蓋靭帯炎などには、大腿四頭筋の柔軟性が低下していると考えれらています。
大腿四頭筋は、体重支持の主働筋であり、膝関節の動きや固定にも重要な役割を持っています。
その為、大腿四頭筋の柔軟性が低下すると体重支持、着地衝撃吸収の効率が悪くなり、筋や腱の骨付着部への負担が増大し、これらの障害の発生につながると言われています。
ハムストリングスの柔軟性の低下
特にハムストリングスの肉離れに関与していると考えられています。
ハムストリングスの肉離れは、ダッシュや全力疾走のようなランニング時の受傷のみならず、ハムストリングスの柔軟性低下による可動域制限に加えて可動範囲を超えた動作が行われ、筋が過伸展されて生じるケースも多いです。
脛骨内側部には、縫工筋、半膜様筋、半腱様筋、大腿薄筋などのハムストリングスを構成する多くの筋が鵞鳥の足の形のように付着しています。(鵞足部)
その為、ハムストリングスの柔軟性が低下すると、これらの筋付着部への負担が増大し、鵞足炎が起こると考えれています。
下腿三頭筋の柔軟性の低下
下腿部の筋(腓腹筋、ヒラメ筋)はアキレス腱と連結しているため、下腿三頭筋の柔軟性の低下はアキレス腱の緊張を高め、アキレス腱炎やアキレス腱周囲炎などの障害を引き起こします。
また、下腿三頭筋の柔軟性低下は着地衝撃の効率を悪くして、下腿疲労性骨膜炎、足底筋膜炎の原因となります。
腰背部の筋の柔軟性の低下
腰背部の筋の柔軟性低下に伴う短縮によって腰椎の前弯が強まり、腰痛を起こしやすくなります。
また、腰椎前弯の増強は、脊柱起立筋や腸腰筋、大腿四頭筋の柔軟性低下によっても助長され、特に腹筋群の機能低下により腹圧力が低下している場合には、その傾向は大きくなります。
この他、腰痛にはハムストリングスや内転筋の柔軟性低下も関与しており、これらの障害の予防や対応において、ストレッチングは非常に重要になります。
競技特性や選手の状態に合わせてストレッチングを行っていくことが望まれますが、一つのストレッチングのみに頼っては十分な効果は期待できません。
選手の自己管理としてスタティックストレッチングがベースにあり、そのうえにトレーナーによる動きや力発揮を伴うストレッチングが選手の身体的特徴や競技現場に応じて適切に行われることが重要になります。
引用・索引Bachele T and Earle R,eds,Essentials of Strength Training and Conditioning.Champaigh,IL,Human Kinetics,2008 397-402
Muscle spindles: basic mechanism of these stretch sensors

基礎から学ぶ! スポーツ障害 (基礎から学ぶ!スポーツシリーズ)
- 作者:鳥居 俊
- 発売日: 2008/12/29
- メディア: 単行本(ソフトカバー)