コンパートメント症候群は、前腕や下腿の筋区画(コンパートメント)の内圧が上昇し、手足がしびれたり痛くなったり、場合によっては手足の血行を阻害する病態です。
外傷などを原因とする急性コンパートメント症候群と、激しい運動を原因とする慢性コンパートメント症候群があります。
急性コンパートメント症候群
外傷や外固定による圧迫を契機に急激に発症するコンパートメント症候群です。
進行すると阻血性拘縮をきたし、重大な運動障害を残すため迅速な対応を要します。
要因
骨折などによる外傷性の筋肉内出血や浮腫によるもの。
外固定(ギプス、包帯)などによる長時間の圧迫によるものなどがあります。
病態
急性コンパートメント症候群は、発症すると内圧の上昇と循環不全が相互に増悪し合う悪循環に陥ります。
短時間で不可逆性の阻血性拘縮(前腕ではフォルクマン拘縮、下腿では、前脛骨コンパートメント症候群が代表的)をきたし、運動機能障害や変形などの重大な後遺症を残します。
症状
急性コンパートメント症候群では、末梢の阻血徴候の5Pに加え、患肢(区画内の筋)を他動的に進展した際に疼痛の増強がみられます。
疼痛は初期症状として現れ、骨折などの疼痛に比べて激しく、経過とともに増悪します。
末梢の阻血性徴候の5P
①蒼白
②脈拍消失
③疼痛
④運動麻痺
⑤感覚障害
⑥他動伸展による疼痛増強(急性コンパートメント症候群でみられる6P)
治療
まずは外固定などの圧迫を加除します。
圧迫解除で軽快しない場合、直ちに筋膜切開術による除圧をおこないます。
急性コンパートメント症候群で阻血が6~8時間以上続くと、神経障害や筋壊死などの不可逆的な変化を生じ、予後不良となる場合が多いです。
急性コンパートメント症候群の疑いが強い場合、直ちに外固定などの圧迫の解除、または筋膜切開術による除圧を行います。
早期治療を行うことが大切です。
筋区画(コンパートメント)
四肢の血管、神経、筋は、骨、骨膜、筋膜などによって囲まれた閉鎖区域の中にあり、この区域を筋区画(コンパートメント)といいます。
前腕には、掌側、背側、橈側の3つの区画、下腿には、前部、外側、浅後部、深後部の4つの区画があります。
コンパートメント症候群の好発部位は前腕の掌側区画、下腿の前部区画です。
引用元:病気がみえるvol.11運動器・整形外科P308.309