筋肉が収縮する際の直接的なエネルギー源は、ATP(アデノシン三リン酸)になります。
このATPは筋肉の中に少量しか含まれていないため、運動を持続するにはいろいろな化学的なメカニズムを通じて、筋線維内でATPを作り出さなければなりません。
これを「ATPの再合成」と言います。
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ATPの再合成システム
第一の過程が、筋線維内にもともと含まれているクレアチンリン酸(CP)を利用するものです。
※クレアチンリン酸は高エネルギー化合物の一種で、クレアチンとリン酸の結合部にエネルギーを保有しています。
クレアチンリン酸がクレアチンとリン酸に分解する時にエネルギーが発生します。
その際のエネルギーを利用し、ATPから分解されたADP(アデノシン二リン酸)にリン酸を結合させて、再びATPを作ります。
この過程は、乳酸が関与していないので「非乳酸性機構」と呼ばれ、、この機構は、10秒くらいまでの短時間の瞬発的な運動(全力運動。全力でない場合は異なる)の際に主に使われます。
「乳酸性機構」
この過程は筋肉内に蓄えられているグリコーゲンや血液中のグルコースなどの糖質を乳酸に分解する過程(解糖反応)で発生するエネルギーを利用して、ADPをATPに再合成する過程です。
これは非乳酸性機構よりやや長い40秒程度の全力運動の際に主に使われます。
非乳酸性機構と乳酸性機構を合わせて「無酸素性機構」と呼びます。
※これは、ATPの再合成の過程で酸素が関与しないことを意味しています。
乳酸と血中乳酸
速い解糖は筋細胞における酸素の利用が減退した時に起こり、その結果として最終代謝産物の乳酸が出来ます。
運動中の筋疲労は、しばしば筋細胞中の乳酸濃度の増加と関係します。
細胞中の乳酸の蓄積は、産生と利用あるいは分解のアンバランスが原因で生じ、乳酸が蓄積すると水素イオン濃度が増加します。
これにより、解糖反応が抑制されると考えられ、おそらくカルシウムのトロポニンへの結合を抑制、あるいはアクチン、ミオシンのクロスブリッジ構造の構築を阻害することにより直接的に筋収縮を阻害すると考えられています。
水素イオンの増加によるpHの低下(より酸性になる)は細胞のエネルギー機構に関与する酵素活性を抑制し、その結果、運動中に利用できるエネルギーを減少させ筋の収縮力を低下させる原因になります。
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引用・索引 勝ちに行くスポーツ生理学
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