体重に占める体脂肪の割合を「体脂肪率」といいます。
一般の成人男性は12~17%程度、女性は22~28%程度が正常値とされ、男性の場合20%、女性の場合30%を超えると医学的には軽度の肥満と見なされ、生活習慣病の危険性が高まるので減量が勧められます。
それほど太っているように見えなくても体脂肪率の高い「隠れ肥満」を手軽な測定器で測定できることもあり、身近な指標となりました。
筋線維タイプとエネルギー消費量(速筋線維は遅筋線維化できるが、遅筋線維は速筋線維にはならない)
スポーツ選手と体脂肪
スポーツ選手の場合、こうした医学的な観点とは別の見方で体脂肪を評価する必要があります。
体脂肪は人間が生存する上で大切なエネルギーの貯蔵庫であり、なくてはならないものですが、スポーツ活動に限ると、脂肪を燃やして筋活動のエネルギーを得る比率はスポーツ活動全体のエネルギー供給システムの中では非常に小さく、多くのスポーツ種目でエネルギー源としての体脂肪は競技成績とは無関係といえます。
陸上で行う多くの種目では自体重を水平に、あるいは垂直に移動させなければいかず、このとき、体脂肪は余分な重量負荷となるため、できるだけ少ないほうが有利となります。
最新の生体エネルギー学(高強度運動中のATP産生クレアチンリン酸(PCr)が継続的に最大18分間にわたって利用されている)
体脂肪が有利に働くケース
一方、脂肪は比重が軽い(約0.9g/c㎥)ため、体脂肪が多ければそれだけ浮力が増し、そのため競泳やシンクロナイズドスイミングなど水中や水上で動作を行う種目の選手は、ある程度の体脂肪が必要となり、陸上で行う種目とは異なります。
特にシンクロの場合、身体を水面から浮き上がらせる動作をするとき、少ない力で高く浮き上がるためには体脂肪が多い方が有利になります。
※一般女性と同程度かそれ以上の体脂肪の選手がシンクロでは一流選手として活躍しています。
体脂肪が有利に働くケースは、体重の重さが決定的な意味を持つ相撲やアメリカンフットボールのラインマンでも生じます。
相手とぶつかった時、体重の重さは相手に与える衝撃の強さに比例します。
※パワーを生み出すために十分な筋肉の基盤があるという事が前提ですが、体脂肪はこの場合武器になります。
さらに、動作に回転を伴い、遠心力の大きさがパフォーマンスに影響するハンマー投げ、円盤投げなども体重が遠心力を増加させる要素となるため、体脂肪が武器になるケースもあり、体脂肪がいつも悪いわけではありません。
とはいえ、体重を増やす必要がある場合でも、力やパワーを生み出すのはあくまで筋肉になり、脂肪の増加による体重増ではなく、まずは筋肉をつけることを大前提として考える必要があります。
※体脂肪は筋肉の活動に対して物理的にプラスアルファを与えるものと考えるべきです。
エネルギー供給系の順番(必ずしもATP-CP系が7秒、解糖系が33秒続き、合計40秒程度の間は、無酸素的にエネルギーが供給されるのか?)
ウェイトコントロールのためのトレーニングの考え方(「エネルギー保存の法則」は熱と筋肉などの運動と食物の代謝が等価であることを示している)
引用・索引 勝ちに行くスポーツ生理学