酸素消費量の回復による2つの回復
上昇した酸素摂取量の基準値へ戻る速度が速いものと遅いもので2つの回復メカニズムがあります。
運動後の酸素摂取量は、運動のエネルギー要求に応じて使用されたエネルギー源の種類を表しており、その人の運動からの回復能力を推測できます。
EPOCの数値はまた、運動後に必要な生理学的修復(構造タンパク質の形成、コラーゲンの合成、免疫学的機能)の程度を示しています。
一般的に、反復的な高強度の伸張性の運動においては、修復の必要な筋の微細損傷がより多く生じ、グリコーゲン貯蔵の吸収度が高まります。
間欠的かつ短時間という投球動作の性質上、乳酸は除去されるため、投球による血中乳酸の有意な蓄積はみられません。
回復コストが高いと、EPOCの数値的にも、生理学的、代謝的結果のより小さい低強度の運動と比較して、基準値へ戻る時間が長くなる可能性が考えられます。
波状型プログラム(漸進的負荷ではなく、トレーニングの仕事量を変動させる)を特に試合期に取り入れ、微細損傷、エネルギー源の枯渇、および乳酸値を抑えることによって回復能力を高めるのが最善です。
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先発・中継ぎ・抑え投手それぞれに必要な有酸素性・無酸素性能力
投手の準備を整えるにあたって、概念的なアイデアを持ち、パフォーマンス能力、投手としての役割、および整形外科的既往歴について理解することで、トレーニングの構成、力学的要素の強化、および競技目標について方針を決定する上での枠組みが得られます。
投手には役割分担があり、一般的には、投げられる球種、耐えられる登板頻度、および球速によって決定されます。
一般的に、先発投手は、4~5種類の球種または投球バリエーション(アームスロット、握り方の変化、およびテンポ)を使い分け、試合の大半を(5~7イニング)を投げ通します。
中継ぎ投手は、2~3種類の球種をコントロールよく投げ、2~3イニングという短期間の救援を行います。
抑え投手は、1~2種類の球種を伝統的に高速で投げるポジションになります。
抑え投手は、ほんの数人の打者を抑えるか、アウト1つを取るために登板することが多くなります。
これらの救援投手陣に対しては、高強度トレーニングを主体とし、持久力トレーニングおよびパワートレーニングを上回らないようにします。
これに対して、先発投手は試合においてより長いイニングを受け持つために、より高いレベルの基礎有酸素性能力が必要になります。
この場合もインターバルトレーニングを用いて、適切な有酸素性トレーニングを行うことにより、有酸素性代謝と無酸素性代謝の両方を強化することが可能になります。
有酸素性能力と無酸素性能力の両方を強化することで、試合中とイニング間の回復向上を促進できます。
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引用・索引National Strength and Conditioning Assciation Japan May 2013Volume 20Number 4 59-60