「乳酸の酸性=筋の酸性化=疲労」なのか?
持久的トレーニングをすると、トレーニング効果で、運動時の乳酸の産生量は低下します。
また、乳酸を酸化してエネルギー源として利用できる量も高まり、そこで、トレーニング後は運動中の血中乳酸濃度がより低い値を示すようになります。
※また、乳酸を中和する能力(緩衝能力)も高まります。
したがって、持久的トレーニングをしたら、より高い血中乳酸濃度になるまで運動を続けられるようになりそうですが、実際には、持久的トレーニングをすると、以前よりも血中乳酸濃度が低い状態で疲労困憊になってしまうことが多く起こります。
乳酸量がより少ない状態で疲労困憊になるので、乳酸が疲労困憊の原因ではないということになります。
これらを踏まえると、「乳酸の酸性=筋の酸性化=疲労」というだけで疲労を説明するのは難しいということになります。
血中乳酸濃度
エネルギー代謝に関係したものの濃度は、よくモルという単位で表されます。
mol/lと表記し、1l(リットル)の溶液に、物質が分子量の重さ分だけ溶けているということを意味します。
多くの場合、1,000分の1である、ミリモル(mmol/l)という単位を使っています。
血中乳酸濃度が1ミリモルとは、血中1l中に乳酸が90mg溶けているということになり、安静時ですと1ミリモルがの血中乳酸濃度になります。
疲労の原因は何か?
乳酸が疲労の主となる原因でないとしたら、何が疲労を起こすのかという疑問がでてきます。
最近では、クレアチンリン酸の低下と、リン酸の上昇による疲労への影響が示唆されます。
※高強度トレーニングにおいての疲労についてになります。
ATP濃度は変化しないが、クレアチンリン酸濃度は低下する
筋肉の疲労時でも、筋内のATP濃度は変化しませんが、クレアチンリン酸濃度は大きく低下します。
この際に、クレアチンリン酸の分解代謝産物であるリン酸の量が大きく上昇します。
また、持久的トレーニングをすると、運動時により乳酸が作られなくなった状況で疲労困憊になりますが、クレアチンリン酸については、トレーニング前でも後でも、疲労困憊時にはクレアチンリン酸濃度は低下し、リン酸濃度は上昇しています。
このことから、リン酸の上昇とクレアチンリン酸の低下は乳酸よりも疲労困憊という減少について関係していることを示唆しています。
引用・索引エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2004/3/12 八田 秀雄 (著)30-31

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