短距離走のエネルギー供給系
100m走のような短距離走では、基本的には最初にあったクレアチンリン酸が主となってエネルギー供給が行われます。
しかし、そうした10秒程度の運動でも、これまで考えられた以上にミトコンドリアでのATPとクレアチンリン酸合成が盛んに行われています。
※クレアチンリン酸は最初の10秒程度で無くなってしまうのではなく、いつも作られていて、補充はされていきます。
短距離走での「きつさ」の原因
100m走では、後半にスピード低下が起こります。
その時の乳酸の生産量はそんなに多くはなく、クレアチンリン酸の枯渇とリン酸の蓄積で疲労と考えることが適当になります。
また、400m走の最後では、多量の乳酸によって、主動筋の内部が酸性になることも影響しますが、クレアチンリン酸が無くなり、リン酸が増えていることも、疲労の一つの要因になります。
リン酸増加の他、カリウムが漏れ出すこと、カルシウムが筋を収縮させる働きが低下することによる機能低下もあります。
なぜ、短距離走では後から苦しくなるのか?
二酸化炭素が呼吸を刺激する
運動をすると筋が働いて、酸素を使って糖や脂肪を分解して水と二酸化炭素にし、ATPを作ります。
その二酸化炭素は血液に溶け込んで行くので、血液中の二酸化炭素濃度が上がります。
血液中の二酸化炭素濃度が上がると、二酸化炭素は呼吸を刺激し呼吸が増えていきます。
後から苦しくなる理由
筋肉の細胞で生じた二酸化炭素は、運動時間の長い持久的運動では運動中に血液を伝わって肺から体外へ出ていきます。
短距離走では、急にエネルギー需要量が上がって、急に二酸化炭素が多く生じますが、すぐに走り終わり、筋でできた二酸化炭素が血液を介して肺にたどり着く前に走り終わってしますのです。
つまり、二酸化炭素が血液中に多く出てくるのは運動後ということになります。
このことが、短距離走では、走り終わってからの息がハーハーし、苦しい1つの要因になります。
このように、もともと筋の細胞で生じた物質が、血液に溶け、そして、それが何か他のことを引き起こすのには、時間の遅れを生じます。
それで、持久的運動では運動中から苦しいが、短距離的な運動ではどちらかというと後に苦しくなるということになります。
そして、これはダッシュを繰り返すという球技などでも同様に起こります。
引用・索引 エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2004/3/12 八田 秀雄 (著) 70-71
Energy Systems - ATP Energy In The Body - Adenosine Triphosphate - Glycolysis

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