エネルギー切れを防ぐために、体内のグリコーゲン量を高める
競技選手の栄養について考えるべきことの一つに、試合中のグリコーゲン切れ(エネルギー切れ)を起こさないようにすることがあります。
運動時の主たるエネルギー源は糖質になり、特に高い強度の運動や長時間の運動をすると多くの筋グリコーゲンが使われます。
しかし、筋グリコーゲンは、エネルギーに換算すると全身で1,500kcal程度しかありません。
また、肝臓にある500kcal程度の肝グリコーゲンと合わせて、全身のグリコーゲン量は2,000kcal程度の量にしかなりません。
競技においてのグリコーゲン消費量
例えば、フルマラソンを走ると2,500kcal程度消費しますので、マラソン後半はグリコーゲン残量との戦いになります。
サッカーなどでは、1試合の走行距離は10km前後くらいですので、消費カロリー自体はマラソンよりは少ないですが、ダッシュが多く、速筋線維の筋グリコーゲンがかなり少なくなります。
試合の後半になると、足の筋グリコーゲン濃度が最初の半分以下になることになります。
筋グリコーゲン濃度が低下すると、運動時のエネルギー供給や筋収縮がうまくいかなくなり、力が出なくなってきます。
また、肝グリコーゲンが無くなってくると、肝グリコーゲンを分解し、血中へグルコースが出せなくなり、そのため、血糖値が下がってしまいます。
血糖値が下がると、脳に大事なエネルギー源が行かなくなるということで、脳は、疲労感という形でその運動をやめなさいという指令を出します。
このように、グリコーゲンが十分にあるということは、競技を行う上で非常に重要になります。
大きく低下した筋グリコーゲンは、1日で元に戻らない
筋グリコーゲンの回復には時間がかかる
平均的な青年男性は、運動を特にしなければ、1日に糖質を1,100kcal程度摂取するとされ、1日で使う糖質は700kcal程度なので、1,100-700=400kcal程度の糖質は、運動しなければ脂肪になり、運動してグリコーゲンが減っていれば、グリコーゲンの貯蔵に回されます。
運動で大きく低下したグリコーゲン量を元に戻そうとするとき、通常の食事では、1日400kcal程度しか貯蔵に回せません。
1日4,000kcalを食べたとして、そのうち糖質摂取がやはり55%ならば、糖質は2,200kcalの摂取で、このうち700kcalは運動しなくても使うわけですので、糖質として貯められるのはそれでも1,500kcal程度になります。
実際には、競技のをしている選手は運動で糖質を使ってしまいますので、貯められる量はもっと少なくなります。
つまり、2,000kcal程度あるグリコーゲンが激しい運動でかなり無くなってしまった場合、それを元に回復させるためには、1日では無理で、2~3日はかかります。
体重測定でコンディショニング管理
グリコーゲンは体内では水とくっついた形で貯められています。
グリコーゲンが大量になくなると、一緒にあった水も要らなくなるので、体重が数kgも減ります。
そのため、ハードな練習が続く合宿期間や連戦の続くシーズン中に、グリコーゲンの回復が不十分になると、体重がすぐ減ってくるので、そこで、体重を毎朝測定することは、グリコーゲン量の指標ともなり、コンディショニング管理の有効な方法となります。
引用・索引エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2004/3/12 八田 秀雄 (著)96-97
Workout Performance vs. Energy Storage | Glycogen Depletion During Exercise (Carb Depletion)

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