運動による筋肥大の開始
レジスタンスエクササイズに対する筋肥大反応の開始には、「機械的張力」「筋損傷」「代謝ストレス」の3つの主因があると考えられています。
力発揮と伸張によって機械的に生じる張力は、筋の発達に欠くことができないと考えられ、それらの刺激の組み合わせには著しい相乗効果があるとされています。
具体的には、負荷の減少が筋萎縮をもたらすのに対して、機械的な過負荷は筋量の増加をもたらします。
このプロセスは、主として遺伝子の翻訳開始中のタンパク質合成率によって制御されています。
レジスタンストレーニングに伴う張力が骨格筋の安全性を乱し、筋原線維と衛生細胞内で、機械科学的に分子および細胞の反応をもたらすと考えられています。
上流へのシグナル
成長因子、サイトカイン、伸展-活性化経路、および焦点接着複合体などが関与する多段階の現象を通して起こるとされています。
下流のシグナル
直接の相互作用を通して起こるとされ、直接の相互作用を通して、またはホスファチジン酸の産生を調整することによって、AKT/mTOR経路により制御されていることを示唆するエビデンスがあります。
伸張性活動
筋線維外要素の伸張、特に基質とタイチンのコラーゲン成分の伸張により、筋に受動的な張力が生じます。
これは、収縮要素によって生じた能動的張力を増大させ、筋肥大反応を増強します。
興奮伝達結合の大きさと持続時間は、ともに運動単位(MU)の発火頻度により決定され、その程度は、カルシウムイオン・カルモジュリン・ホスファターゼカルシニューリン、CaMKⅡ、CAMAⅣ、PKCを含む様々な下流へのシグナルをコード化すると考えられています。
これらの経路は、筋の興奮を転写と結びつけて、遺伝子発現の決定を助けます。
受動的な張力
筋線維のタイプに特異的な筋肥大反応をもたらし、その効果は速筋線維でみられ、遅筋線維ではみられません。
機械的な張力
単独でも筋肥大をもたらすことができますが、それだけが運動に伴う肥大を説明する唯一の原因である可能性は低く、実際、筋の高い張力を使う特定のレジスタンストレーニングルーティンは、結果的に筋肥大が生じなくても、神経系の適応をもたらすことが知られています。
筋損傷
運動は局所的な筋の損傷をもたらしますが、ある状況下では損傷が筋肥大反応をもたらすとの理論があります。
筋損傷は、組織の少数の巨大分子に特異的に起こることもあり、あるいは筋細胞膜、基底膜、筋を支える結合組織の大きな裂傷となる場合もあり、収縮要素と細胞骨格の損傷を誘発します。
最も弱いサルコメアは筋原線維の様々な場所にあるために不均一な伸張は筋原線維の剪断を引き起こします。
これは、細胞膜、特にT管を歪め、カルシウムホメオスタシスの破壊をもたらし、結果的に細胞膜の断裂および、または伸展活性化経路を開くことにより筋に損傷を与えます。
筋損傷の反応
筋損傷の反応は、損傷が身体によって認知されると、好中球が微小外傷部分に移動し、筋線維から放出された作用因子が大食細胞とリンパ球を引きつけます。
大食細胞は、線維の超微細構造の維持に役立つ細胞の断片を取り除き、筋芽細胞、大食細胞、リンパ球を活性化するサイトカインを生成します。
これは、衛生細胞の増殖と分化を制御し、様々な成長因子の放出をもたらすと考えられています。
さらに、神経筋接合部の下には、筋成長に影響を及ぼす衛生細胞が高密度で含まれています。
これは、損傷を受けた線維に作用する神経が、衛生細胞の活動を刺激し、それによって筋肥大を促進する可能性があることを示しています。
引用・索引Fatouros IG.Jamurtas AZ Leontsini D,Taxildaris k,Aggelousis N,Kostopoulos N,and Buckenmeyer P.Evaluation of plyometric exercise training,weight training,and their combination on vertical jumping performance and leg strength.J Strength Con Res14:470-476.2000

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