反応の場所に注目してみる
強度の高い運動をするとなぜ乳酸は溜まってくるのでしょう?
そのカギは、反応する場所にあり、ピルビン酸が乳酸になる場所は、細胞質と呼ばれる場所になります。
細胞質は、細胞内で細胞小器官以外の場所のことをいいます。
グリコーゲンは細胞質に蓄積され、そのグリコーゲンの分解産物であるピルビン酸も、細胞質でできてます。
一方、ピルビン酸が完全に酸化されるのはミトコンドリアの中になり、ピルビン酸は細胞質からミトコンドリアの中へ移動する必要があります。
単純に考えると、移動がない分、細胞質でできたピルビン酸がそのまま乳酸になるほうが、ミトコンドリアに入って完全に利用されるよりも簡単ということにつながります。
グリコーゲンは必要であれば、後の反応など気にせず分解される
さらに、グリコーゲンの分解は、分解物のピルビン酸が、その後ミトコンドリアでどれだけ処理できうるかとは、まったく無関係に進むことがあります。
運動を開始した瞬間、急にスパートし強度を上げた瞬間などの場面では、急にグリコーゲンの分解が高まります。
この場合、ミトコンドリアが反応できる量を超えてピルビン酸ができてしまい、そうなると、ミトコンドリアで処理できないピルビン酸は、そのまま溜まることはないので、どんどん乳酸になるということになります。
速筋線維で乳酸が多くできる
筋線維の中で、速筋線維は遅筋線維と比較してミトコンドリアは少なく、筋グリコーゲンは多く含まれています。
そのため、速筋線維では、糖が多く分解され、ピルビン酸がミトコンドリアで酸化される量は少なく、ピルビン酸は乳酸になりやすくなります。
つまり、速筋線維では乳酸が多くできるということになります。
強度の高い運動では、速筋線維が多く動員される為、強い運動をすると乳酸が溜まっていきます。
ミトコンドリアの酸化反応は、かなり精密にコントロールされていますが、糖分解のコントロールはかなりラフな設定があり、糖の分解が高めれば、乳酸が多くできるということになります。
引用・索引エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2004/3/12 八田 秀雄 (著)110-116
What Lactate is & What it ACTUALLY does: 5 Min Phys

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