アミノ酸は飢餓時のエネルギー源となる
タンパク質は、アミノ酸がたくさんつながりできたものになり、「窒素」と「炭素」が主体でできています。
アミノ酸は、基本的にはタンパク質はエネルギーを生み出すためのものよりは、筋肉などの身体の構造を作るものになります。
しかし、アミノ酸は炭素がある限りエネルギー源になり、肝臓はアミノ酸からグルコースを作ることができます。
特に飢餓時のには、筋などでアミノ酸が直接のエネルギー源となったり、肝臓で筋が分解したアミノ酸からグルコースが合成されたりします。
すなわちアミノ酸は、糖が無くなった際に、代替のエネルギー源になります。
どんな時にアミノ酸は利用されるか?
長時間運動時、特にマラソンやウルトラマラソン、また長期間の山岳や砂漠などを歩行するような状況は、体内の糖が不足するという点において、飢餓状態と同様といえ、このような状態ではアミノ酸のエネルギー源としての重要度が増します。
このようにアミノ酸のエネルギー源として重要度は、条件によって変わっていきます。
運動中のエネルギー供給の割合を見ると、アミノ酸からのエネルギー供給は総エネルギーの約5%程度となります。
総エネルギーの5%程度ですが、マラソンの最後や、ウルトラマラソンのような糖が無くなってくる状況ではアミノ酸の重要度も増すということになります。
グルコース-アラニン経路
アミノ酸が運動時の代謝に関係している「グルコース-アラニン回路」と呼ばれる回路があります。
筋肉にあるアミノ酸には多くの種類がありますが、その中でもアラニンは多く、つまり、筋肉ではアミノ酸をアラニンの形で放出することが多くなります。
筋肉から放出されたアラニンは肝臓でグルコースに戻ります。
グルコースは続いて肝臓から放出され、血液に出て筋肉に取り込まれれば、グリコーゲンになることができます。
このことをグリコーゲン-アラニン回路といいます。
アミノ酸は調整役なのか?
近年、アミノ酸のエネルギー代謝に関する役割として考えられているものに、ミトコンドリアの調整役があります。
ミトコンドリアではTCA回路で酸素を使ってATPを作るのですが、アミノ酸はこのTCA回路の働きを少し高める可能性があると考えられています。
またアミノ酸の中でも、特にアルギニンは血管を拡げる働きがあり運動中の筋などの血液循環を高め、ミトコンドリアの働きもよくなるとされています。
アミノ酸はこれまで、エネルギー源というよりは、身体の構成成分であり筋肉を作るものと考えられていましたが、エネルギー代謝にもある程度関わり、調整にも関与することがわかってきました。
引用・索引エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2004/3/12 八田 秀雄 (著)pages133-136
Overview of Amino Acid Metabolism

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