足関節背屈可動域制限(Ankle Dorsiflexion)
足関節の動き
足関節背屈可動域制限は、座位から立位への姿勢変更、立位時の動的バランスなど通常動作において必要とされます。
水平面を歩く、階段を下りる、ひざまずくなどの活動には約10°の背屈が必要であり、ランニングやスプリントなどの動作には20~30°の背屈が必要になります。
背屈を妨げる要因
足関節が背屈可動域に達することを妨げる可能性のある要素として、腓腹筋-ヒラメ筋構造などの収縮組織(筋、腱)と非収縮組織(靭帯、関節包、骨)などがあります。
足関節背屈に関わる筋と関節を評価して動作制限に関与している可能性のある構造(収縮組織/非収縮組織)を特定する必要があります。
背屈制限の評価
通常、足関節可動域はクライアントを非荷重姿勢にして測定します。
膝関節伸展姿勢による測定では、背屈可動域に対する腓腹筋-ヒラメ筋構造の影響が評価され、膝関節屈曲姿勢による測定では、ヒラメ筋の影響が限定的に評価されます。
測定には、標準的な角度計(ゴニオメーター)か、気泡管水準器(インクリノメーター)が用いられます。
気泡管水準器
背屈制限に対するストレッチ
制限が存在する場合には、動作改善のために特異的な修正法を実施する必要があり、また収縮制限が認められる場合は、一般的に腓腹筋とヒラメ筋の静的ストレッチを実施して制限を改善します。
腓腹筋とヒラメ筋のストレッチは荷重姿勢で行っても非荷重姿勢で行ってもよいです。
非荷重姿勢でこれらの筋のストレッチを行うには、クライアントをベッドまたは床に座らせ、膝関節を伸ばしたり(腓腹筋)、曲げたり(ヒラメ筋)させることが必要になります。
荷重姿勢の場合には、傾斜板や階段等を利用して上り坂を作って足関節を背屈させ、膝関節を伸展させたり、軽く屈曲させたりして、後面の筋群のストレッチを行います。
荷重姿勢のストレッチは、足関節傷害の痛みによる動作制限が消失してから実施します。
関節包に制限が認められる場合、距骨の後方への滑りを向上させることが背屈可動域の改善に役立つ
非収縮構造(関節包を靭帯)も足関節可動域に関与しています。
例えば、距腿関節の後距骨の動作に制限がある場合には、十分な背屈を行うことができません。
非収縮構造に制限が認められる場合には関節モビライゼーションが必要になります。
距腿関節に関しては、関節包に制限が認められる場合、距骨の後方への滑りを向上させることが背屈可動域の改善に役立つと考えられています。
したがって、足関節の関節包と関節可動域の制限に対処するには、距腿関節の後方モビライゼーションが一般的に利用されます。
引用・索引School of Kinesiology and Health Science York University Toronto Ontario

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