リン酸ローディングによる生理学的能力向上
リン酸ローディングによる能力向上は、運動パフォーマンスおよび多くの対応する生理学的測定値において証明されています。
最大酸素摂取量(VO2max)をはじめ、無酸素性閾値、疲労困憊に至るまでの時間などの改善がされるとされています。
これらの測定値の改善はパフォーマンス変数の全領域に及んでおり、どのスポーツを選択しても、これらの測定値の向上がトレーニングを試合に有利であることは疑いはありません。
さらに生理学的検査や臨床試験によれば、、リン酸の補給は、標高への生理学的適応を助けるといわれています。
その中には、血漿リン酸および2,3ジフォスフォグリセリン酸(2,3-DPG)の増加が含まれ、また主観的な健康状態も改善します。
したがって、リン酸は、数週間におよぶ高強度パフォーマンスに直接的な利益をもたらし、高地でのパフォーマンスにも好影響を及ぼす可能性があります。
赤血球中の2,3-DPGの影響
酸素親和性に対する赤血球中の2,3-DPGの影響も十分に証明されています。
2,3-DPGはリン酸と逆の相関関係にあり、リン酸の補給は赤血球中の2,3-DPGの増加と酸素親和性の低下により、高強度エクササイズ中のVO2maxが増加すると推定されます。
Cadeらはエルゴジェニックエイドとしてのリン酸の利用を初めて検証し、リン酸ローディングにより、鍛錬者の男性ランナーのVO2maxが6~12%向上したことを明らかにしました。
補給するリン酸
使用されたリン酸化合物の種類は様々ですが、著しい増加が達成された場合の補給方法としては、通常、リン酸ナトリウムが用いられます。
リン酸ローディングをする期間による効果
様々なローディングプロトコルの違いがにより、一時的投与(最長6日間)と長期的補給(約30日間)とに結果に違いが出てきます。
一時的補給がパフォーマンスを改善する最も現実的で効果的な方法であるとされています。
期間による投与の違い
一時的投与では最大12%のVO2maxの増加が示されたの対して、長期的投与では有酸素性体力のわずかな変化を示しただけでした。
さらに、大多数の研究では、リン酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、またはリン酸カルシウムを経口補給の形で用いましたが、このうちリン酸ナトリウムが最も一貫性のある効果を示しました。
高強度インターバルトレーニングとリン酸ローディング
サプリメントの補給を行わないときの高強度インターバルトレーニング(HIIT)と2,3-DPG濃度の上昇に関しては、あまり明確な結果は得られていません。
HIITが男女どちらにおいても、心肺持久力の増進をもたらすことは知られています。
HIITがもたらす利益にリン酸補給を加えることにより、パフォーマンスの一層の向上がもたらされると考えられます。
特に、持久系アスリートにとって、HIITサイクルの終盤でリン酸ローディングにより酸素利用能が高まれば、トレーニング量の増大にも競技にとっても有益であると思われます。
引用・索引Asci A and Acikada C.Power production among different sports with similar maximum strength.J Strength Cond Res21:10-16.2006
High Intensity Interval Training for Patients with CAD: What Risks? What Benefits?

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