投球量は野球肘(リトルリーグ肘:LLE)の主因のひとつ
投球量はLLE(野球肘)の主因のひとつと考えられています。
投球量は、1試合当たりの投球数ならびに1シーズン当たりの投球数と定義されます。
Lymanらは前向きコホート研究(特定の地域や集団に属する人々を対象に、長期間にわたってその人々の健康状態と生活習慣や環境の状態など様々な要因との関係を調査する研究)において、9~12歳の選手では1試合の投球数が75球を超えると肘痛の有病率が35%上昇することを明らかにしました。
さらに1シーズン当たりの投球数が600球を超えた投手にも肘痛の有意な増大がみられました。
また、Olsenらが行った別の研究では、競技への参加期間が1年に8ヶ月を超えた若年投手では、手術の必要な肘の障害を発生する確率が5倍にのぼったという結果が出ています。
同じ研究では、腕の疲労を無視して投げ続ける野球投手は受傷リスクが36倍にのぼり、これらの研究結果は、「疲労」がLLEの危険因子であることを示唆しています。
野球肘とピッチングメカニクス(若年野球投手の肘内側に加わる力は最大64.6Nに達し、肘外反ピークトルクは肩関節が最大外旋する直前に最大になる)
投球量と疲労
疲労は労働や激しい運動、ストレスから生じる倦怠感や消耗と定義されます。
筋疲労は個人差が激しく、また遺伝、フィットネスとコンディショニング、次の登板までの休息期間、野球のシーズン全体を通じて身体にかかってくる累積的ストレス、および投球数や球種など多くの要因の影響を受けます。
疲労の程度は、標準的な視覚的アナログ尺度を用いて主観的に評価することが可能になります。
疲労と競技動作
また、競技動作中の疲労を客観的に評価する尺度も確率されています。
つまり、疲労はバイオメカニクスおよび神経筋機能を変化させるため定量化することができます。
客観的な疲労の評価尺度は、反応時間、動作のコーディネーション、運動精度、および筋の力発揮などの低下になります。
野球のピッチングなどの競技動作を実行する際の神経筋戦略が変化また低下すると、受傷リスクを高める関節運動や力が生じる可能性があります。
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引用・索引 NSCA JAPAN Volume19 Number3 page16