リトルリーグ肘(LLE)の主因のひとつとなる球種の選択
多くの研究では、4つの球種(速球、カーブ、チェンジアップ、スライダー)について、その影響を調査しています。
若年投手は変化球(カーブ、スライダー)を投げないように提言している研究もいくつかあります。
この提言は、変化球は速球に比べて「より大きな前腕の回外と手首の動きを必要とする」事実に基づいており、手、手首、および前腕の位置と動きをの違いが肘の障害につながるということに起因しています。
野球肘とピッチングメカニクス(若年野球投手の肘内側に加わる力は最大64.6Nに達し、肘外反ピークトルクは肩関節が最大外旋する直前に最大になる)
カーブは有害ではないとする声も
一方で、カーブは必ずしも他の球種に比べて有害ではないとする研究もあります。
Fleisigらは、カーブの投球時に関節に加わる負荷は速球の負荷に比べて有意に大きくないと報告しています。
Dunnらの研究結果もこれと一致しており、9~14歳の若年レベルの投手にとってカーブは速球よりも有害であるとは言い切れないと結論づけています。
ただし、この2つの研究は、あくまでもコントロールされた実験環境において実施されたもので、そこで得られた知見、およびそれを実際に競技で若年者が行うピッチングに応用することに限界があるかもしれません。
基本動作の習得からピッチングメカニクス習得まで
カーブの使用について情報が対立している部分はあるものの、球種の選択に関しては研究間で概ね見解が一致しています。
概して、若年野球投手においてはランニング、スローイング、キャッチングなどの野球に関連した基本動作に力をいれることが推奨されています。
それらの基本動作を習得した後は、球速のピッチングメカニクス、続いてチェンジアップのピッチングメカニクスに力を入れ、両球種とも正確に投げられなければなりません。
若年投手が速球とチェンジアップのピッチングメカニクスを習得したら、次はカーブのピッチングメカニクスへと進みます。
ただし、カーブは最も習得が難しく、また最も指導が難しい球種であることを留意しなければならず、カーブの採用には慎重な考慮を要します。
野球肘と基礎運動技能(ファンクショナルムーブメントスクリーンを理解することが投球障害予防につながる)
サイドスローと野球肘リスク(サイドスローのバイオメカニクスは、肩外転の減少と前額面における同側への体幹側屈を伴い、肘の内反負荷を増大させる)
引用・索引 NSCA JAPAN Volume19 Number3 pages16-17