長距離選手と筋力トレーニング
適切な種類の筋力トレーニングプログラムを用いれば、長距離走のパフォーマンスを向上させる可能性があります。
筋力の向上は、力(筋力)とスピードの積である筋パワーの向上をもたらし、運動能力は、その人が発揮し、維持することができる力とパワーの量によって決まります。
力とパワーに影響を及ぼすものは、骨格筋の有酸素的および無酸素的代謝能力のほか、神経-筋コーディネーション、骨格筋の力学およびエネルギー学的要素、および代謝性パワーの機械的パワーへの変換効率になります。
走っているとき、足は地面にほんの一瞬しかつかず、そのような短時間ではとても最大の力発揮はできず、これは、力の立ち上がり速度(RFD)を高めることが重要という事を示しています。
パワー系の筋力トレーニング
パワートレーニングは、高重量を用いるトレーニング(例:85%1RM以上の負荷で3~6レップを3~5セット)、またプライオメトリックトレーニングにより、筋におけるパワー発揮を高めることによりランニング効率と持久的パフォーマンスを向上させることができます。
高重量トレーニングはパワーの筋力要素を重点的に強化するのに対し、プライオメトリックトレーニングはパワーのスピード要素を重点的に強化します。
高重量トレーニングやプライオメトリックトレーニングが持久的パフォーマンスに及ぼす影響を調べた研究で、最大酸素摂取量(VO2max)や乳酸性作業閾値など、長距離走に重要な他の心肺機能に関連した数値に変化を認めたものはありませんが、このことは、ランニング効率の向上は心肺機能や代謝関連の変化によってではなく、その他の機序によってもたらされることを示唆する点で重要になります。
かなりの高重量を挙上している際(筋力要素)、または素早いプライオメトリック動作を行っている際(スピード要素)には、ほぼすべての筋線維が動員されていることになり、そのことは中枢神経系にトレーニング刺激をもたらします。
その結果、筋における力の立ち上がり速度が向上し、筋はより強く、素早く、そしてパワフルになります。
筋が力を発揮する効率が向上すれば、それだけランニング効率も高まり、動作効率の向上はすべてのランナーに利益をもたらします。
筋力トレーニングのプログラム例
週 | スクワット | レッグカール | カーフレイズ | パワークリーン | デッドリフト |
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第1週 | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) |
第2週 | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) |
第3週 | 90%1RMで3~5レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 90%1RMで3~5レップを3セット(セット間に5分の休憩) |
第4週 | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) |
第5週 | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを4~6セット(セット間に5分の休憩) |
第6週 | 95%1RMで3レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを3セット(セット間に5分の休憩) | 95%1RMで3レップを3セット(セット間に5分の休憩) |
筋力トレーニングをクライアントのプログラムに加えることを計画している場合は、筋量が増えるとランニング効率が低下するため、強度を非常に高く、レップ数を非常に少なくして、筋肥大よりも神経系の適応に重点を置くことになります。
筋力/パワートレーニングは、軽いランニングや長距離ランニングと同日ではなく、スピードトレーニングと同日に行うことも重要になります。
これは、スピード/筋力、パワーは、持久力に比べ、より密接に関連しあった生理学的特性になるからあり、年間トレーニング計画(ピリオダイゼーション)にて管理すべきです。
プライオメトリックトレーニングのプログラム例
週 | シングルレッグホップ | ブリーチャーホップ | ダブルレッグバウンド | オルタネイトレッグバウンド | スクワットジャンプ | デプスジャンプ | ボックスジャンプ |
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第1週 | 2×5 | 2×5 | |||||
第2週 | 2×5 | 2×5 | |||||
第3週 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | |||
第4週 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | ||
第5週 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 |
第6週 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 | 2×5 |
引用・索引Effects of Performing Endurance and Strength or Plyometric Training Concurrently on Running Economy and Performance37-45

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