上腕骨内側上顆炎のリハビリテーション
上腕骨内側上顆炎におけるリハビリテーションにおいて重要な事項は、入念なストレッチと厳密なストレングスプログラムが推奨されています。
筋力およびパワーの向上を目指す前に、持久力トレーニングを最初のトレーニング目標とし、軽めの負荷と痛みのない関節可動域で行い、このような漸進は、負荷を次第に増加させることに役立ち、知覚、固有感覚、運動パターンの再教育を可能にします。
野球肘:上腕骨内側上顆炎のリハビリテーション(回外と回内、およびニュートラルな肢位での肘関節屈筋群の十分な強化を含めなければならない)
エクササイズモデル
エクササイズは、漸進的な負荷モデルを採用し、手関節屈筋群と肩関節の全体的な強化に重点を置きます。
漸進モデルには、第一段階の日ごとに漸進を調節するレジスタンスエクササイズから、上肢の筋群の競技特異的フィットネスへの回復を目的とする、第三段階の伝統的な筋力トレーニングまで含まれます。
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疼痛後の伸張性エクササイズの利点
疼痛が沈静化したら、伸張性筋活動に重点を置くエクササイズを開始する必要がありますが、その際、負荷は大きく、レップ数を少なく抑えます。
伸張性エクササイズは、近年、腱の傷害の施術に広く取り入れられるようになりましたが、それは、インスリン様成長因子を増加させ、細胞増殖と基質の再造形を促進するメカノトランスダクション(機械的な負荷を細胞の反応に転換するプロセス)の効果があるためです。
その他の伸張性トレーニングの利点として、腱量の減少、発揮筋力の増大、さらに短縮性エクササイズよりも必要なエネルギーが少ないなどが挙げられます。
反復的な過伸展(肘関節と前腕屈筋結合組織の伸展)により、肘関節に傷害を起こしたハンドボールのゴールキーパーが、80%1RMで8~10レップのエクササイズを用いた筋力エクササイズプログラムを週3回、24ヶ月実施したところ、肘関節と手関節の屈曲・伸展および回内・回外運動において有意な筋力の向上を示しました。
第Ⅰ段階
傷害の急性期には、積極的休息(少量、低強度の競技特異的ではない運動)を行う必要があり、これは、疼痛を軽減し、肘関節患部の修復の開始に役立ちます。
痛みを誘発する活動は、除外または軽減する必要がありますが、その場合でも、全身および患部以外の四肢のコンディショニングはなお推奨されます。
ストレッチエクササイズは受動的な手関節屈曲伸展および肘関節の屈曲伸展の両方を行うことから始め、すべての大筋群のストレッチを確実に行う必要があり、これらのストレッチは15秒~30秒、5レップずつ行います。
特にアスリートの関節可動域が制限されている場合には、肩関節の全体的なストレッチを含める必要があり、最初はボール握りや手関節の屈曲伸展(肘は曲げたまま)などの等尺性収縮エクササイズ(3~10秒保持)が推奨されます。
第Ⅱ段階
アスリートがこの段階を開始する際は、疼痛や関節のストレスを最小限に抑えるために、肘関節を屈曲させた状態から始め、段階的に完全伸展へと漸進させ、回内や回外、手関節の屈曲、伸展などのレジスタンスエクササイズはこの段階で取り入れます。
肩のストレングストレーニングにも取り組み必要があり、特に筋力が衰えている場合や過度の弛緩が認められる場合には、確実に強く安定した関節を鍛えるのに役たちます。
野球肘と基礎運動技能(ファンクショナルムーブメントスクリーンを理解することが投球障害予防につながる)
第Ⅲ段階
第Ⅲ段階では、全身の筋力向上と競技特異的エクササイズに重点を置き、リハビリテーションのプロセスにおいて、肘および肩関節の柔軟性と全体的な強化が積極的な役割を果たします。
主な目標は、アスリートを可能な限り短時間で、競技に復帰させることですが、アスリートが再度負傷することのないよう完全に回復した状態に戻すことが肝心であり、筋力およびパワーのエクササイズと並んで、競技特異的活動の再導入も第Ⅲ段階で実施する必要があります。
トレーニングの漸進があまりにも急進的であることを示す兆候として、炎症反応(発赤、腫脹、疼痛、熱感、機能喪失)に注意しなければならず、このような症状が起きた場合は、トレーニングの強度または量を減らしたり、トレーニングの間の休息期間や休息日を変更などで対応します。
上顆痛は、前腕筋組織の反復的な使用により生じる疼痛であることを考慮し、傷害予防プログラムには、能動的、受動的およびダイナミックな柔軟性エクササイズ、等尺性、短縮性、伸張性の筋力トレーニング、プライオメトリックを含むパワートレーニングなどを取り入れる必要があります。
サイドスローと野球肘リスク(サイドスローのバイオメカニクスは、肩外転の減少と前額面における同側への体幹側屈を伴い、肘の内反負荷を増大させる)
投球障害予防トレーニングプログラムを選定する上で考慮すべきこと(片側性動作とオーバーヘッド動作)
引用・索引 Strength & Conditioning Journal Volumes33 Number2 pages84-91