伸張-短縮サイクル:SSC
伸張-短縮サイクルパフォーマンスのための伸張性トレーニング
筋が抵抗に打ち勝つことを求められる際(短縮性筋活動によって収縮することを求められるとき)、それを実行する能力は、短縮性筋活動の前に伸張性活動が行われているかどうかにより決まるとされています。
短縮性筋活動だけによる発揮筋力は、先行的に伸張性筋活動を伴う短縮性筋活動よりも低いことが研究によって示されています。
SSC(Stretch Shortening Cycle:伸張-短縮サイクル)
伸張性筋活動を伴う短縮性筋活動の組み合わせがSSC(Stretch Shortening Cycle:伸張-短縮サイクル)といいます。
SSCは関連する関節において何らかの角変位を伴い、随意活動と不随意活動(伸張反射:SR)の両方によって構成されています。
SSCの増強を至適化するには(力強い短縮性筋活動を行うには)重要な因子が数多く存在します。
SSCの増強を至適化する重要な因子
- 接地前に筋組織が予備緊張していること
- 移行局面(伸張性局面終了と短縮性局面開始の間の時間)がほとんど存在しないこと
- 筋活動の持続時間が短いこと
- 伸張性筋活動の速度が短いこと
- 動作の振幅が比較的小さいこと
予備緊張
Dietzらは、ドロップジャンプの接地前に伸展筋群が緊張し、この筋活動こそが筋のスティフネスを作り出して、筋で発生する伸張量を最小化させており、したがって筋長の変化のほとんどは接地時に伸展筋群の腱で発生することを示しました。
接地時に生じる力はエネルギーを生み出し、そのエネルギーは基本的に腱に蓄えられ、より力強い短縮性筋収縮を作り出すことを助けます。
移行局面:短い収縮持続時間
弾性とは、変形した後に元の形に戻ろうとする物体の力であり、弾性エネルギーとはこの過程においてなされる仕事を指します。
筋の結合組織(筋周膜、筋外膜、筋内膜など)、筋線維と直列につながる構造(腱、タイチンなど)、そして収縮要素そのものなど、数多くの組織がSSC中に弾性エネルギーを蓄えることができます。
収縮要素における弾性エネルギーの貯蔵はアクチン-ミオシンブリッジの「ポッピング(弾けること)」を伴わずに、筋が実際に伸張する際にフィラメント間のクロスブリッジで行われます。
しかし、様々な組織に蓄えられるこのエネルギーは持続時間に制限があり、0.85秒で半減し、1.0秒につき55%減少します。
したがって、貯蔵された弾性エネルギーを最大限に利用するためには、移行局面を最小限に留めてSSCを0.25秒未満とするべきとされています。
高速の伸張性筋活動:振幅の小さい動作
予備緊張が生じるときやアスリートが接地するときは、SR(伸張反射)と呼ばれる反射が生じます。
SRは筋紡錘から中枢神経系に送られる信号の副産物になり、筋紡錘は筋の感覚器官であり、筋長の変化と速度に関する上方を提供します。
例えば、ドロップジャンプでは、接地に影響を受けた筋(足関節底屈筋、膝および股関節伸展筋)の長さを筋紡錘が感知し、信号が知覚運動神経を介して脊髄へと送られます。
脊髄ではシナプスが発生し、興奮性信号がα運動ニューロンを介して筋に送られ、これによって筋が短縮性筋活動を行います(筋紡錘を初期長に戻すため)。
伸張速度が速いほど、反射による短縮性筋活動が生む収縮力が増強され、この反射は運動神経の興奮レベルと動作の振幅(関連する関節の動き)の小ささに影響されます。
現場への応用
伸張性トレーニングに伴う応力、ひずみ、動作速度は、適応および機能面で大きく異る結果をもたらします。
伸張性トレーニングのタイプ | 応力(負荷) | ひずみ(筋長) | 速度 |
---|---|---|---|
リハビリテーション | 低~中 | 短~長 | 遅~中 |
至適筋長の変化 | 低~中 | 長 | 遅~中 |
増強負荷 | 中 | 中 | 遅~中 |
最大上負荷 | 高 | 中 | 遅 |
伸張-短縮サイクル(SSC) | 中~高 | 短 | 速 |
引用・索引 Dietz V Noth J.Schmidtbleicher D.Interaction Between Preactivity and stretch reflex in human triceps brachiiduring landing from forward falls.J Physiol311:113-125

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