Mポジションまたは逆W投手と肘障害リスク
「Mポジション」「逆W」と表現される投球メカニクスは、肘内側(野球肘)の障害を引き起こしやすい傾向にあります。
踏み出し足の接地局面における肩関節の内旋角度が大きい投手は、肩のインピンジメント(野球肩)と肘内側の障害を起こすリスクが高くなります。
体幹の前方への基準ベクトル(0°の中立軸とみなされる)から前腕ベクトルの内旋変位置量が、肩の内旋角度を示すと考えられています。
Mポジション
Mポジションは、ローテーターカフの外旋筋群から開始される外旋の速度を高めると推測されており、高められた外旋速度は、投球側の手の加速と、踏み出し足の接地から重心の前方移動とが同時起こるように調整されます。
理論上、高い外旋速度は、MERにおける投球側の前腕の慣性を増大させることが証明されており、前腕が外旋位に向かう加速度が増大すると、外反トルクが増強されるために、肘内側の安定化要求が高まります。
野球肘とピッチングメカニクスの評価(ピッチングの加速期において肘が肩の高さに届かない不適切な位置の場合、肘内側にかかる外反ストレスは増大する)
肘に加わるトルクとモーメント
肘内側の引張損傷と肘外側の圧迫損傷を低減させるには、内反モーメントの強化トレーニングを行うことが非常に重要になります。
さらに、高速外旋を制御するための減速動作によって、肩関節の前方関節包の弛緩性が高まる可能性もあります。
外旋速度を制御できると、投球動作のレイトコッキング期に生じる外反負荷を低減することが可能になり、この制御という概念は、非常に高い外旋トルクについて調べた先行研究において支持されています。
プロレベルの投手においては、高い肩外旋トルクは高い肘外反トルクに関連していることが明らかになっており、内旋を行う伸張性筋活動を強化し、さらに動作を改善して、肩が受動的に外旋されるようにすると、加えられる内反トルク(外反ストレスに抵抗する釣り合いモーメント)の負荷速度と量が低減される可能性があるとされています。
引用・索引 Strength & Conditioning Journal Volumes33 Number5 pages1-24