減速に使用される筋群
減速に使用される主な筋群は大腿四頭筋と腓腹筋になります。
しかし、加速局面の短縮性筋活動とは異なり、この2つの筋群は慣性による推進力が吸収され、分散されるようになり伸張性筋活動を通じて働きます。
推進力によって伸張された脚は、身体に対して作用する純粋な前方後方の力と結びついて、潜在的な危険な体勢となりますが、接地前に発生する大きな伸張性の力の吸収に役立ます(負の仕事=伸張性の力×COMの下方変位)。
減速局面中、身体の運動エネルギー(KE=1/2mv2)は減少します(推進力をもたらす短縮性局面の前に、下方へ向かう(負の)速度が0に近づくため)。
KEは失われるのではなく、弾性エネルギーへと移行し、直ちにその後の運動に利用されるか(方向転換、ジャンプなど)、完全な停止の場合は熱や音として消散します。
立脚期
支持期と遊脚期の長さは加速局面でも減速局面でも同じになりますが、この2つの動作戦略に間では、目的が著しく異なります。
加速局面の支持期は、蹴り出し時により大きな推進力を発生させるために最大化されます。
しかし、減速局面の接地時間は、それによってCOMをより長く支持基盤よりも後方に留めるため(着地距離をより大きく長くするため)と、脚を通じてエネルギーが吸収される量と時間を増大させるために最大化されます。
身体が接地している時間が長いほど、脚筋がより大きな負の力積と仕事を生み出し、身体の推進力とKEを減少させる脚の力が大きくなります。
遊脚期
加速局面においても減速加速局面においても、遊脚期は短いほうが好ましくなります。
加速局面においては、力が発揮されるのは接地時のみであるために、空中で費やされる時間が長いほど速度が減少、したがって、速度が素早く増加するように、遊脚期を短く保ちます。
対照的に減速局面においては、それまでに蓄積されたエネルギーと推進力の吸収が接地時のみに行われます。
さらに減速局面では、踵からつま先への接地が行われ、そのため離地前に次の脚の接地が行われることが多く、これによって遊脚期は完全に消滅します。
引用・索引 Andrews J McLeod W Ward T and Howard K The cutting mechanism Am J Sports Med 5:111-121

- 作者:阿部 征次
- 出版社/メーカー: ベースボールマガジン社
- 発売日: 2004/03
- メディア: 単行本