筋痙攣のメカニズムの違い
運動誘発性筋痙攣に対する中枢神経の刺激が存在することは、研究者により根拠を持って一般的に取り入れられていますが、神経性刺激自体の起源については議論があります。
中枢起源説(Central Origin Theory)の支持者は、運動ニューロンの過剰興奮から痙攣が始まると示唆しています。
一方、末梢起源説(Peripheral Origin Theory)の支持者は、痙攣は運動筋の無髄軸索終枝の異常興奮による運動ニューロンの自発放電の結果であると主張しています。
中枢起源説
Schwellnusらは筋疲労が生じることにより、収縮と弛緩を担う脊髄の神経筋制御機構の機能に変化が生じることを示すエビデンスを示しました。
動物モデルにおいて、筋疲労はタイプⅠaとⅡ筋紡錘求心性神経の発火頻度を増加させ、ゴルジ腱器官からのタイプⅠb求心性神経の発火頻度を減少させることにより、末梢筋受容体の適切な機能を混乱させることが示されました。
※筋紡錘(タイプⅠaとⅡ)からの求心性神経シグナルが、(過伸展を防ぐために)筋の反射的な収縮を起こすこと、そしてゴルジ腱器官が(タイプⅡb求心性運動ニューロンを通じて)筋の緊張を緩めるシグナルを出すことになります。
筋紡錘からの求心性神経活動が増加し、ゴルジ腱器官からの入力が低下すると、結果的に運動ニューロン細胞体で弛緩を命じるシグナルが受信されず、これは、収縮を肯定するフィードバックループができることを意味し、続いて、さらに収縮を促す求心性神経の筋紡錘のシグナルの伝達が起こります。
受動的なストレッチ(ゴルジ腱器官の活性化)が痙攣を軽減すること、また短縮した筋や二関節筋で軽減がより頻繁に起こることが(ゴルジ腱器官が非活動状態にあるため)中枢性起源説を支持しています。
末梢起源説
運動誘発性筋痙攣が無髄軸索終末の自然発火によって起こるという考えは、運動誘発性筋痙攣が脱水と血中電解質濃度の低下によって起こるとする末梢起源説の中心概念になります。
末梢起源説では、運動誘発性筋痙攣は脱水と血中電解質濃度の低下によって起こると考えられています。
その理由は、自発的な軸索放電(痙攣)は、大量発汗による脱水の結果として筋組織の損傷および細胞内代謝産物と神経伝達物質濃度の増加の結果起こると考えられるからです。
引用・索引Jansen P.Joosten E Vingerhoets H.Muscle cramp.Main theories.as to aetiology.Eur Arch Psychiatr Neurol Sci239:337-342

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