喘息の病理的因子
エクササイズを実施する喘息のクライアントにとって、気道過敏性(AHR)による気管支収縮は、エクササイズに対する耐性、エクササイズのパフォーマンス、および身体活動に主観的にも生理的にも影響を及ぼす、主な病理学的因子のひとつとなります。
喘息を有する人は、肺機能の低下、運動誘発性気管支収縮(EIB)、筋のコンディショニングなどの要素が重なったり、身体活動の不足で心肺機能が低下することから、エクササイズに対する耐性が低い傾向にあります。
また、EIBは、様々な薬を用いた前処置によって予防したり、発症しにくくすることが可能でありますが、EIBを発症するかもしれないという不安や、息切れを感じることが原因となって、スポーツへの参加レベル、全般的な身体活動レベル、および生活の質が低下することが明らかになっています。
心肺系と筋のコンディショニングは、筋疲労と換気量を高めるため、通常の身体活動やエクササイズにおける息切れの主観的感覚に悪影響を及ぼす可能性があり、加えて、身体活動レベルの低さは、喘息の重症度および有病率と有意に関連しているとみられます。
喘息のコントロールとトレーニング
定期的な身体活動とエクササイズが、喘息のクライアントへの健康状態に重要な役割を果たすことはよく知られており、最近のCochraneレビュー(臨床試験の文献レビュー)の結果は、ほとんどの安定した喘息のクライアントは一般的に、有酸素性およびレジスタンストレーニングを含むトレーニングに対する十分な耐性を有するという既存のエビデンスを支持しています。
さらに、同レビューは、フィジカルトレーニングによって、喘息のクライアントへの最大酸素摂取量に臨床的に有意な上昇がみられ(平均差:5.57ml/kg/分、95%信頼区間CI:4.36~6.78)とのエビデンスを示しています。
自転車運動、グループエクササイズ、水泳などのフィジカルトレーニングプログラムを1回30~60分、週2~3回実施したところ、最大呼気換気量が上昇(6.0l/分、95%CI:1.57~10.43)、これらや他の類似したフィジカルトレーニングプログラムでは、安静時肺機能検査の結果に有意な変化は生じませんでした。
このように、エクササイズの実施や身体活動の増加では、空気量(1秒量FFV1)や努力呼気肺活量は改善しないとみられますが、有酸素性エクササイズが喘息のコントロール全般を向上させるとのエビデンスも存在します。
有酸素性コンディショニングプログラムを効果的に実施することで、一部の喘息のクライアントに換気量の増大が生じることは、EIBの発症頻度と重症度を低減し、ひいては喘息のコントロール全般を間接的に改善する上で役立つ可能性があります。
引用・索引Ali Z.Norsk P.Ulrik CS Mechanisms and management of exercise-Induced asthma in elite athletes.J Asthma 49:480-486.2012

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