心臓血管系疾患とレジスタンストレーニング
かつては、レジスタンストレーニング(RT)は心臓血管系の合併症を起こすおそれがあるとされていましたが、現在ではむしろRTは心臓リハビリテーションの重要な要素として受け入れられています。
RTで改善される生理学的適応には、筋力や骨密度および運動耐性の向上のほか、気分や自立心さらに生活の質の改善、収縮期血圧(BP)の低下、さらに内臓脂肪の減少などが含まれます。
レジスタンストレーニングの有効性
しかし、管理不良の高血圧症や不整脈のある人など、高リスクの心臓病クライアントにおける安全性や有効性はまだ十分に知られていません。
RTはステント挿入術のおよそ3週間後、バイパス手術または心臓発作の5週間後に、監督下での有酸素性運動(AT)を最大で4週間完了したクライアントに限り開始すべきとされています。
さらに、報告によると、心臓発作を起こしたクライアントでも、30ポンド(13.6kg)を運ぶ程度の活動であれば、発症後わずか3週間でも安全に実施できます。
運動中の心臓血管反応が正常であることを確認するために、セッション中の心拍数(HR)とBPの規則的なモニタリングを行うことが推奨されています。
冠状動脈バイパス手術を行なったクライアントのための特別な配慮としては、胸骨の十分な施術を促すために、胸部に重い負荷をかけることは避けなければなりません。
さらに、開始当初のエクササイズでは、筋持久力の向上を増進するために低負荷多レップに重点を置く必要があります。
低リスクのクライアント(アメリカ心臓協会とアメリカ心臓病学会の基準でクラスB=無症候群)は、医療専門職以外のスタッフの監督下でもRTを実施でき、一方、高リスクのクライアント(クラスC=心不全既往歴)は、医療関係者によるモニタリングが必要になります。
心臓血管系疾患クライアントまたは心臓リハビリテーション終了者におけるRTの絶対的および相対的禁忌
絶対的禁忌 | 相対的禁忌 |
---|---|
不安定狭心症 | 糖尿病 |
管理不良性不整脈 | 管理不良性高血圧(>160/100mmHg) |
急性全身性疾患/発熱 | 機能的能力<4METs |
管理不良性高血圧(>180/110mmHg) | 筋骨格の制限 |
重症および症候性大動脈弁狭窄症 | ペースメーカーや除細動器挿入手術後の患者 |
重症肺高血圧(肺動脈圧>55mmHG) | CVDの主要リスク因子 |
非代償性心不全 | |
心筋梗塞後1週間のRT | |
起立性低血圧(めまいや立ちくらみを伴う収縮期血圧の20mmHg以上の低下) |
低リスクの心臓血管系疾患(CVD)においては、週2~3回、すべての大筋群に対して1~2セット、8~15RMの負荷は安全とみなされ、最初の負荷は、下肢では50~60%IRM相当とし、上肢は30~40%1RMとします。
クライアントが所定の負荷で12~15レップ×2~3セット完了できるようになった時点で、強度を5%ずつ増加させます。
セット間の回復時間は、用いた負荷により30~120秒までの範囲とし、RT中の強度のモニタリングには、BorgのRPEスケール(6~20)を用いることができ、望ましい努力の範囲は11(楽である)から14(ややきつい)になります。
安定型心臓血管系疾患および心臓リハビリテーション中のクライアントのレジスタンストレーニング例
エクササイズ | レップ数 | セット数 |
---|---|---|
チェストプレス | 8~15 | 1~2 |
ニーエクステンション | 8~15 | 1~2 |
プルダウン | 8~15 | 1~2 |
ショルダープレス | 8~15 | 1~2 |
トライセップスエクステンション | 8~15 | 1~2 |
レッグカール | 8~15 | 1~2 |
アブドミナルクランチ | 8~15 | 1~2 |
カーフレイズ | 8~15 | 1~2 |
引用・索引Wisloff U,Ellingsen O,Kemi OJ.High-Intensity interval training to maximize cardiac benefits of exercise training Exerc Sports Sci Rev37:139-146,2009

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