高齢者の筋力トレーニング
高強度の筋力トレーニングは高齢者の筋肥大、筋力増加を導く可能性は高く、このトレーニング効果は100歳を超える高齢者に対しても十分な効果を発揮してくれるのであろうかを研究した成果を下記にまとめます。
Fiataroneら(1999)の研究
年齢が72~98歳(平均年齢87歳)の男性13名、女性13名がランダムに4群に分けられ、コントロール群は普段の生活(特に身体活動レベルと食事)を維持し、筋力トレーニング群は高強度の膝関節伸展・股関節伸展運動を実施しました。
さらに、サプリメント群は360カロリーの補助食品(60%糖質、23%脂質、17%タンパク質)を摂取しました。
さらにもうひとつの群は筋力トレーニングとサプリメント摂取を併用しました。
筋力トレーニングは最大挙上重量の80%で1セット8レップ、3セット、週に3回行いました。
実験前の栄養摂取は各群に差はみられず、1日の摂取エネルギー量は約1,500~1,600カロリー、タンパク質摂取量は体重1kgあたり約1.2gでした。
10週間の実験期間後、1RM筋力は筋力トレーニング群で約100%増加、筋力トレーニングとサプリメント群で約250%増加しました。
サプリメント群とコントロール群では変化はなく、外側広筋から採取した速筋線維の横断面積は筋トレ・サプリメント併用群でのみ増加がみられ、サプリメント群では大きな変化はありませんが、筋力トレーニング群とコントロール群では減少傾向にありました。
今回の結果は、虚弱な高齢者でも筋力トレーニングによる適応は十分に起こりますが、その可能性を高めるためには適切な栄養摂取を併用する必要性を示しています。
Raueら(2009)の研究
平均年齢85歳の高齢女性6名と平均年齢21歳の若年女性9名が高強度の膝伸展トレーニングを12週間実施しました。
トレーニング強度は1RMの70~75%とし、1セット10レップを3セット(セット間の休息2分)、週に3回行いました。
1RMは2週間ごとに測定し、負荷重量を調整し、すべての被験者は36回のトレーニング(週3回×12週間)を完了しました。
12週間後、1RM筋力は若年女性で36%、高齢女性で26%増加しました。
一方、CT法で測定した大腿中央部の筋横断面積は若年女性で約5%増加しましたが、高齢女性では有意な変化は示しませんでした。
本研究の結果は筋力トレーニングによる筋肥大反応が加齢に伴って鈍くなり、特に80歳以上の高齢女性ではそれが躊躇に現れる可能性が示唆されました。
考察
以上の結果から、筋力トレーニングは高齢者の筋力を向上させる効果があり、その向上は日常生活における生活動作の改善に寄与する可能性が高い一方、高齢者に対する筋力トレーニングは筋肥大を起こす可能性は含んではいますが、現れる筋肥大効果は実施するトレーニングの条件や対象者の属性に強く影響されている可能性が考えられます。
100歳を超えても筋肥大が起こるか否かは、対象者の属性(遺伝的素因やこれまでの運動経験と現在の活動レベル、栄養摂取状態や身体コンディションなど)に大きく影響されることが予想されます。
引用・索引Fiatarone Singh MA EC Ryan ND etal,High-Intensity strengh training in nonagennarians.Effects on skeletal ,muscle,JAMA 263:3029-3034:1999
Raue U Silvka D Minchev K et Al.Improvements in whole muscle and myoceleular function are limitied with high-Intensity resistance training in octogenarian woman.J Appl Physiol106:1611-1617:2009
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