椎間板
椎間板は隣接する椎骨との間に軟骨性連結を形成し、椎骨同士が互いに固定することによって脊椎の運動を促進し、椎骨への衝撃を吸収する働きがあります。
椎間板は明確に異なる3つの部分からなり、外層の線維輪、中央の髄核、そして2つの硝子軟骨終板で構成され、内側と外側に分かれた多層構造の線維輪は、主にⅠ型とⅡ型のコラーゲンで形成されています。
線維輪は張力またはフープ応力ともいわれる外向きの力に抵抗し、運動中の長軸方向の圧縮に対し椎骨を安定化させる働きを担います。
また、線維輪はゼリー状の髄核を包み込む働きもあり、髄核は、軟骨細胞のコンドロイチン、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカンなどの混合体で、プロテオグリカンは、グルコサミノグリカン(GAG)を豊富に含むことにより圧縮負荷に抵抗する役割を担っており、GAGは親水性で、水と結びつくことにより浸透圧を提供する長枝多糖類になります。
髄核の機能
髄核の機能は、クッションのように長軸方向の負荷から椎骨を保護し、隣接する椎体終板に圧力を一様に分散することになり、終板の成分は主にⅡ型コラーゲンで、その厚さは1mmにも満たず、椎間板まで伸びる線維を含みます。
椎体終板は髄核が隣接した椎骨中に飛び出すのを防ぐことに加え、脊椎の負荷によって起こる静水圧の吸収を助け、栄養分をいきわたらせます。
椎間板の変性
椎間板の変性疾患は、遺伝的、力学的、生物学的、環境的因子が作用するプロセスがあり、椎間板変性の最初の徴候は、11歳から16歳の間にしばしばみられ、10代の青少年の約20%に軽い椎間板変性が認められます。
しかし、わずかな裂け目や髄核の粒状変性など軽度の徴候は、2歳児の椎間板でも発現し、さらに、椎間板は年齢に伴い劣化が進行する傾向があり、70歳になるまでに、大多数の人の椎間板が変性の徴候を示します。
加齢による変性は、プロテオグリカンとコラーゲンの含有量の低下に伴い、髄核のGAGの固定電荷密度(機械電気化学的強度)は約5分の1に減少します。
思春期の椎間板に比べると80歳の椎間板の水分含有量は2分の1に減少し、椎間板の厚さは減少し、耐荷重能力が低下します。
男性は、女性よりも椎間板変性が発現する傾向が強く、その理由として、体幹筋力の高さ、脊椎への力と応力を高める抵抗モーメントアームの長さなど、多くの因子の組み合わせによると考えられています。
椎間板変性メカニズム
椎間板変性は、線維輪、髄核および終板の構造的な障害から生じ、加齢、アポトーシス(プログラム化された細胞死)、コラーゲンの異常、血管の内植、力学的負荷およびプロテオグリカンの異常などすべて椎間板の劣化が進むにつれて、局所的な血管が軟骨組織と終板に生じ、髄核は一層固くなり、線維化し、繊維輪の層が減少します。
これにより、椎間板の高さが変わり、脊椎のバイオメカニクスと耐荷重能力も変わることが明らかになっており、最終的に脊椎間狭窄症を起こす可能性があります。
これは、椎間板の退行変性が進行した病態であり、脊椎間の内部、特に神経組織への圧迫が生じます。
また、終板の石灰沈着により栄養の拡散が妨げられるとphバランスが崩れ、髄核部分の炎症反応が促進されて、椎間板変性をもたらします。
脊椎の退行変性と腰痛(LBP:Low Back Pain)の増加との関連性も明らかになっていますが、脊椎変性を起こしている人の中でも無症状である人もいます。
引用・索引School of Health and Sports Sciences Universitat de Girona Salt Catalonia Spain46-47
Patient Animation - Lumbar Degenerative Disc Disease

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