脊椎椎間板への力学的負荷
遺伝的要因が椎間板の変性に非常に大きな影響を及ぼすため、脊椎の回復能力を超えない範囲で軟部組織を強化する適応をもたらすために十分な量、強度、頻度を正確に知ることは困難であり、組織への力学的負荷には健康な椎間板の維持を容易にする「安全な範囲」が存在するとの理論があります。
力学的負荷が脊椎の圧迫に関係することのエビデンスは、この理論を支持しています。
椎間板の疫学的研究
Mundtらによる疫学的研究では、野球、ソフトボール、ゴルフ、水泳、ダイビング、ジョギング、エアロビクス、ラケットスポーツ、ウェイトリフティングなどのスポーツへの参加は、椎間板ヘルニアの増加リスクとは関連がなく、むしろヘルニアに対する予防効果すら提供することが明らかになっています。
Kelseyらは、椎間板脱出に関しても類似の結果を報告し、これらのスポーツの多くは、屈曲を含む脊椎の運動を高頻度で行うが、その事実は人の脊椎の屈曲回数には上限があるという理論に疑問を投げかけています。
椎間板の組織修復とオーバーユース
スクワット、デッドリフト、チンアップ、プッシュマシンなどのマシンを用いないエクササイズを行なっている際に、脊椎とコアの筋組織に負荷がかかるとすれば、大抵のトレーニングが「コアトレーニング」となり、したがって、組織が「ユースストレス(効果的ストレス)」に留まり、「デイストレス(悪影響のあるストレス)」にならないことを保証するえためには、念のため、腰椎の屈曲エクササイズの量を制限することが最善であり、現行のデータに基づくと、健全なコア強化のルーティンは、各トレーニングセッションで60レップを超えるべきではないとされています。
さらに、ダイナミックな脊椎屈曲エクササイズ中は、十分な休息を取ることが重要になり、運動後の筋タンパク質の合成は48時間続き、タンパク質の合成が終了する前に筋群を鍛えることは、筋の発達を損ない、局所的なオーバートレーニングをもたらす可能性があります。
椎間板は血管が少なく、代謝産物の運搬レベルが低く、他の骨格組織に比べリモデリングが遅れるため、回復により多くの時間が必要になります。
引用・索引School of Health and Sports Sciences Universitat de Girona Salt Catalonia Spain46-47

- 作者:Roald Bahr
- 発売日: 2015/10/08
- メディア: 単行本