市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌への危険因子
市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(CA-MRSA)への感染が増加している主な層は、健康に問題がなく、一般的にMRSA感染が懸念されるような医学的因子(例:入院中または最近入院していた、侵襲的器具による処置を受けた、長期ケア施設に滞在中)を持たない人々の層になります。
全米のスポーツチームでも、CA-MRSA感染の報告数が増えており、このような感染は、人の多い居住環境、衣服や用具、タオル、カミソリの共有など、環境要因が原因であることが多くなります。
そのほか、皮膚外傷の不適切な処置、MRSAにより皮膚病変を生じた患部との皮膚接触、および不適切な衛生管理も感染原因に関与しています。
スポーツ環境における黄色ブドウ球菌(非常に深刻な深部感染症を引き起こすことがあり、急性・致死性の菌血症、壊死性肺炎、および壊死性筋膜炎が挙げられる)
兆候と症状
皮膚や軟部組織に感染症らしき損傷を生じたとの報告をアスリートから受けた場合、スポーツ専門職はCA-MRSAへの感染症を疑うべきとされています。
感染は病変部への炎症によってそれとわかり、炎症の五大兆候は、熱感、発赤、腫脹、疼痛、および機能障害になります。
病変部の熱感は、感染による血流増加と代謝率の上昇によるもので、感染が疑われる部位の発赤は、同じく血流増加と代謝率の上昇に加え、外傷に伴うヒスタミンの分泌によって起こります。
腫脹は、炎症伝達物質が周辺組織に放出されることで起こります。
疼痛は、周辺の軟部組織と神経受容体への機械的刺激または化学的刺激によって生じます。
組織の損傷はさらに機能障害、すなわち関節可動域の損失、組織柔軟性の損失、および組織量の減少を引き起こすことがあります。
高強度トレーニングと免疫系(糖質には、高強度の持久系エクササイズに応答して起こる免疫細胞とサイトカインの乱れを制御する働きがある)
医師の診察の重要性
CA-MRSA感染を疑われるときは、アスリートに医師の診察を受診させるべきです。
MRSA感染の兆候と症状の中に、にきびやおでき、クモの噛み痕に似た 赤いものが出現することがあり、菌は皮膚だけにとどまることがほとんどですが、時としてより深刻な感染症に発展する場合もあります。
菌が身体の深部に入り込むことで症状は進行し、骨や関節、手術創、血流、心臓弁、および肺に、生命の危険を伴う感染症を引き起こします。
医師は、感染組織や鼻汁の培養から薬剤耐性菌の兆候を確認し、MRSAの診断を下しますが、CA-MRSAの正確な診断には、通常最大48時間を要します。
免疫機能(身体の中に侵入する病原性微生物やガン化した細胞などの異常細胞を破壊あるいは無害化して排除する仕組み)
運動時の免疫系の変化(オーバートレーニング時には一過性の免疫応答の抑制状態が続く)
引用・索引Applebaum PC.MRSA-The tip of the iceberg.Clin Microbiol Infect Dis12(Suppl2):3-10,2006