性差によるスポーツ傷害
男女の障害発生率
バスケットボールに関連する傷害の大多数は男女共通であり、男子選手と女子選手の傷害発生率も同等になります。
しかし、前十字靭帯(ACL)損傷は別であり、女子選手におけるACL損傷の発生に関しては、詳しい調査が行われています。
事実、カッティングやジャンプを行う競技に参加する女子選手は、男子選手と比べて膝を損傷する可能性が4~6倍に上ることが示されています。
女子選手の前十字靭帯損傷構造的因子
文献によると、女子選手におけるACL損傷の発生率の高さには複数の変数が関与していると考えられています。
構造的因子として、a)上前腸骨棘から膝蓋骨の中点へ伸ばした線と、脛骨粗面から膝蓋骨の中点へ伸ばした線によって形成されるQアングルが大きいこと、b)脛骨外捻が大きいこと、c)前足回内が大きいことが挙げられます。
通常、これらの構造的差異によって、女子選手は着地時の膝の外反が大きくなりがちであり、これが過伸展と組み合わされることによって、ACL断裂のメカニズムを構成しています。
男女の機能的差異
男子選手と女子選手の機能的差異としては、a)体幹部の安定性の低さ、b)ハムストリングス活動の低さ、c)内側広筋斜頭の低発達、d)中殿筋の安定性の低さ、e)大腿四頭筋の伸張性筋力の低さが挙げられます。
通常、これらの因子は、着地時およびカッティング時に膝の屈曲を低下させ、膝の外反を増大させます。
Lephartらは、シングルレッグランディングとフォワードホップにおける男子選手と女子選手の筋力変数を比較しました。
この際、女子選手は男子選手と比べて、膝の屈曲が有意に小さく、そしてシングルレッグランディング中は、女子選手のほうが股関節の内旋が有意に大きくなりました。
また、大腿四頭筋とハムストリングスの体重比ピークトルクが有意に低くなりました。
調査対象の女子選手において観察された着地時のメカニズムの貧弱さの主因は、大腿部の筋組織の弱さにあると考えられています。
これに関連してLeetunらは男子選手は女子選手と比べて、股関節外転筋、股関節外旋筋、腰方形筋の筋力が有意に大きいことを明らかにしています。
これらの結果から示唆されることは、体幹部の筋力における差異が、女子選手におけるACL断裂の発生源率の高さの一因となっている可能性があります。
引用・索引Asci A and Acikada C.Power production among different sports with similar maximum strength.J Strength Cond Res21:10-16.2006

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